“ISETAN it GIRL” はマーケティングのセオリー通り??
走る物欲、佐藤です。
さて、都内の百貨店では、池袋で、銀座で、新宿で、売り場の
改装ラッシュ。
その中心は若い客層目当てのフロア改革。
この秋、時間を見つけては改装後のデパートめぐりです。
新しいブランドの投入、見やすく、選びやすくなった売り場・・・
確かに「改装」されています。
しかし、
がっかり、というか、なんか、「新しいけどちっとも目新しくない」
という印象の連続で、走る物欲もブレーキの連続です。
唯一、「おぉっ!」とうなったのは新宿伊勢丹の「イセタンitガール」
でした。
なぜ、イセタン it ガールだけが?
その答えは①タイミング②ネーミング③コンセプト④コミュニケーション
この4点で他店とは、ダントツの力強さを感じさせたからです。
①タイミング
他店の改装オープンに先駆け、9月3日オープン。
夏休みが終わり再び学校へ、の時期。
気分は秋だけど、日中の気温と日差しは真夏を感じさせ、ちょっと着る物
に悩む季節。
久しぶりに会う友達の視線も気になるし、新学期だから気分的にも新しい
ものが欲しい。そして、買い物に時間もとれる連休開始前。
売り場の対象は、都内私大・付属校に通う女子学生、ハイティーンから
20代前半の女子ということですから、まさに、ターゲットの気持ちにぴったり
寄り添うオープニングのタイミングでした。
②ネーミング
従来の「シンデレラシティ」から「イセタンitガール」へ。
「シンデレラ」はいつか白馬の王子様に見初められて・・・という、
「待ち」の気持ちや、「合コン服」「モテ服」に代表されるような男性の目や
好みを意識においていますが、
「シンデレラ」を外し「ガール」としたことで、「女の子、である自分が好き」と
いう自己肯定、「待ち」や「男性」からちょっと自立、といった、まさに、it-
「新しさ」を感じさせます。
また、他の百貨店では見かける、ヤング-Youngというある一定の年代層を
感じさせる言葉を使っていません。Girl と表現したことで、対象年齢の幅を
広げたとも言えます。
「少女-Girlの心」は、ものごころつく頃から「成人式は・・度済ませました」方
まであらゆる年代の女性が持っているものですから。
③コンセプト
「学校で、友達と、親と、自分の部屋で」
という4つの生活シーン毎に売り場を構成。
一見混乱しそうな商品の量と種類ですが、
「清潔感があり、性別・年代を問わず高い好感度を得られる、手頃な価格の通学服」
「カワイイ、時に不良っぽい香りもする、友達と過ごす休日の服」
「上質でクラッシックさも感じさせる親と一緒のお出かけ服」
「思いっきりコテコテに甘く、リラックスして楽しむ自分の世界」
と、それぞれのシーンがはっきり伝わってくるものが集められているので、
分かりやすく、選びやすくなっています。
④コミュニケーション
お客様の眼に入るものはすべてコミュニケーション ツール
一般的な雑誌や広告でのパブリシティのみでなく、売り場の新しさをお客様へ
全力で伝える、という意気込みを感じました。
・全フロア一括で改装。部分的に徐々にショップの入れ替えを行う、という他店の
改装とは異なって新しさ、の印象が増します。
・新しい制服。他のフロアとは別の、ショートパンツやキリリとした小さなボウタイ、
というところで「Girl」のカワイイ、元気を表現。
・秘密の小部屋風のソファ付き試着室。
壁の色彩や、装飾、カーテン、まるでお城の小部屋でお友達とドレスを選んでいる
ような設えの試着室は、ちょっと特別な気分を醸し出します。
・エコバックにも使える独自のショッピングバック。
内側にはPlease reuse meとプリントされた、伊勢丹チェックの不織布製。Isetan
it Girl のタグ付き。プレゼント用にはデコデコのおリボン付き袋。
(サクランボのプリントされたフリル付きゴム手袋をプレゼント用、と言ったら入れて
くれました!)
まさに、マーケティングで押さえるべきポイントをきっちり踏まえての改装といえます。
さらに、おもしろかったことは、初日から目立つ男性客です。
オープンの日はさすがにスーツでなく、ポロシャツにチノパン、ナイロンショルダー
バッグといういでたちだったりするのですが、
眼光鋭く腕組みし、売り場をフ~ラフ~ラ、2日目以降は堂々とダークスーツで売り場
が見渡せる隅に立ち、お客様の動きをじっと観察しつづけるメガネの紳士、さらには
ドレスをじっくり手に取り、その感触やら、縫製のチェックを綿密にし、ひっそりと会話を
かわす柔らかい素材のデザイナーシャツを着こなす二人連れ、
などなど売り場とは違和感ある、「競合店調査中です」がバレバレの方々をそこかしこ
にお見受けしたこと。
ネットショップの意外な効果にも気付かされました。
「あ~カワイイッ~」「ネットで売り切れてたのがあるぅ~」と、感激の声を連発しながら
次々とお買い上げのGirlたち。「えっ、その手があったかぁ~」という感じです。
ネットで品切れさせ、「買いたかったのに~いぃっ!」の気持ちを盛り上げ、売り場にいざ
ない、ネットショップに出ていない、お目当て以外のものも一緒にお買い上げ上げいただく。
コラボ商品や限定グッズ販売からまた一歩進んだ、新しい手法だと思いました。
と、見どころ満載のIsetan it Girl。この輝きをいつまでも保ち続けて欲しいものです。
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佐藤様、松原様、いつも楽しい記事の執筆ありがとうございます。
読者の皆様、ブログへのご訪問、コメントのご記入等、ありがとうございます。
実はこのほど弊社システムに不具合が生じ当ブログへの貴重なコメント2件および松原様の新着記事2本を誤って削除してしまいました。弊社側の不手際により皆様にご迷惑をおかけしましたことを心よりお詫び申し上げます。再発防止に努めますので、引き続き、当ブログを通じたコミュニケーションをお楽しみくださいますよう、宜しくお願いいたします。
コメント by レッドクルーズ ブログ担当 — 2008年11月5日 @ 16:11