中岡望の目からウロコのアメリカ

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2012/11/28 水曜日

安倍さん、金融政策について話をしましょう:その政策のどこが間違っているのか

Filed under: - nakaoka @ 22:50

金融政策を巡って民主党と自民党の論争が続いている。白川方明日銀総裁も、自民党の超積極的金融緩和論に反論を試みている。この論争の何が問題なのであろうか。安倍晋三自民党総裁の金融政策論の妥当性を検討してみることにする。これは前に本ブログで書いた「ゼロ金利政策を再検討するとき」に繋がる内容である。この記事を読んだ後、そちらの記事も参照していただければ幸いである。 (続きを読む…)

2012/11/13 火曜日

米大統領選挙の徹底分析:なぜオバマ大統領は再選を果たせたのか?

Filed under: - nakaoka @ 3:11

大統領選挙は予想外の大差でオバマ大統領が再選を果たした。同時に行われた議会選挙では、下院は共和党が多数を占め、上院は民主党が過半数を維持した。さらに州知事選挙では共和党候補が圧勝した。アメリカ国民はワシントンの政治構造の急激な改革を望まなかったのである。極めて穏当な選択を行ったともいえる。以下、大統領選挙の分析を行うが、11月8日の産経新聞社の『Business i』に寄稿した原稿を拡大したものである。 (続きを読む…)

2012/10/28 日曜日

超低金利政策は本当に有効なのか

Filed under: - nakaoka @ 0:53
 

最近の経済政策を巡る議論は、「財政均衡」と「超金融緩和」の大合唱となっている。ノーベル経済学賞の受賞者であるポール・クルーグマン・プリンストン大学教授やジョセフ・ステフィグリッツ・コロンビア大学教授はいずれも、こうした風潮に批判的である。クルーグマン教授は、あたかも財政均衡を達成すれば景気が回復して、経済が再び成長するという考え方は間違っていると主張している。同教授は「地位の高い人々は財政赤字削減にいますぐ動かないと大災害がやってくるという黙示録じみた予言をするのが大流行になっている」と書いている。要するに、財政赤字を削減しないと“第2のギリシャ”になってしまうということだ。さらに財政緊縮こそが景気回復と経済成長に繋がるという理論(同教授は、それを拡張的緊縮政策=expansionary
austerity”
と呼んでいる)を支持する歴史的事実も統計的分析も存在しないと指摘している。 (続きを読む…)

2011/10/30 日曜日

アメリカの宗教事情:減少する主流派プロテスタント、台頭するエバンジェリカルとカトリック教徒

Filed under: - nakaoka @ 22:32

アメリカはプロテスタントの国です。宗教的弾圧を逃れて欧州大陸から宗教的自由を求めてピューリタンがアメリカ大陸にやってきました。人口の圧倒的多数はプロテスタントが占めています。しかし、そうした宗教の情勢に大きな変化が起っています。主流派プロテスタントは長期的な低落傾向にあり、非主流派のエバンジェリカル(福音派)の勢力が伸び、同時にカトリック教徒もその数を増やしています。アメリカの宗教に何が起っているのか。アメリカの政治を理解するには、宗教を知らねばなりません。それが将来のアメリカの政治にどのような影響を及ぼすのか、調べてみました。 (続きを読む…)

2011/8/2 火曜日

債務上限引き上げを巡る”チキン・ゲーム”:アメリカは本当に赤字削減できるのか

Filed under: - nakaoka @ 13:07

アメリカの債務限度額引き上げを巡る民主党と共和党の対立は一応終結をみました。両党とも財政赤字削減では意見は一致していましたが、具体的な案を巡って意見が分かれていました。オバマ大統領と民主党は増税と歳出削減を組み合わせることを主張したのに対して、共和党は増税は認めないとの立場を取り、同時に憲法を修正して財政均衡修正条項を求めていました。土壇場での妥結ですが、予定されたものだったと思います。債務不履行をいうリスクを犯してまで、債務限度額引き上げを拒否する理由はないからです。ただ、これを人質に取ることと、お互いの立場を主張しあうことで、民主党はリベラル派を、共和党はティーパーティ議員を納得させる必要があったのでしょう。議会では両党とも離反者が出るでしょうが、とにかく財政赤字削減への道筋を付けたことになります。ただ、これが実際に実現できるかどうかは別物です。また景気への影響も懸念されます。以下、この問題の背景と合意内容などを整理しました。 (続きを読む…)

2011/7/28 木曜日

崩れゆく”アメリカン・ドリーム”-限界に来た所得格差

Filed under: - nakaoka @ 0:22

最近、元アメリカ政府の高官だった友人夫婦と会食をする機会がありました。アメリカの団体の日本代表として日本に住んでおり、年に何度も帰国するとのことでした。そして彼は「アメリカに帰るたびに社会的な状況が悪くなっている」と語っていました。そして、「できるだけ日本にいるつもりだ」とも言っていました。確かにアメリカ経済の状況はあまり改善していません。社会的な問題も山積しています。国債発行限度額引き上げを巡る党派の争いは、ひどいものです。かつてのような輝きをアメリカ社会は失いつつあるようです。今回は崩れつつある“アメリカン・ドリーム”について説明します。 (続きを読む…)

2011/7/22 金曜日

ささやかなる宗教的雑感:カルヴァン著『真のキリスト教的生活』を読んで

Filed under: - nakaoka @ 0:21

睡眠不足の日が続いていますが、今日は久しぶりに朝寝をしました。お昼前に『選択』の編集者の電話で目が覚めました。来週月曜締め切りで、アメリカの「宗教と政治」の問題を書いて欲しいとの依頼でした。前々から興味あるテーマで、アメリカの宗教関連の本を買いあさっていました。現在のアメリカ政治の中で保守派のエバンジェリカルは政治的に大きな影響を発揮しており、その存在を無視してアメリカ政治を議論できません。大学の授業でも「宗教的観点を踏まえて分析しないとアメリカの政治と社会は理解できない」と教えています。本ブログでは私的なことは極力書かないことにしていましたが、ささやかな我が宗教的な感想を書いて見る気になりました。私は無神論者ですが、宗教を否定するものではありません。世俗的な宗派は拒否しますが、人には“宗教心”はあると思っています。本論に入る前に、まず『中央公論』8月号別冊(「日本経済の生存力」)に「世界経済の暗雲・オバマ・アメリカの挫折」と題する長い記事を寄稿しました。ぜひお読みください。中央公論のサイト(http://www.chuokoron.jp/2011/07/post_89.html)を参照してください。 (続きを読む…)

2011/7/20 水曜日

6冊の本の書評:書評は知的チャレンジである

Filed under: - nakaoka @ 2:48

最近、書評を書く機会が増えています。主に英語の書籍ばかりを読んでいたのですが、このところは翻訳本を読むことが多くなっています。書評は単に本の紹介に留まらず、評者の意見や解釈も反映してきます。じっくり読む機会が減っているので、書評は良い知的な挑戦になっています。ここで取り上げたのは『週刊東洋経済』の書評欄に書いたものです。ブッシュ全体頭領の『決断のとき』、ワイマールのインフレを詳細に描いた『ハイパーインフレの悪夢』、ポールソン前財務長官の『ポールソン回顧録』、アメリカの宗教問題を取り扱った『神と人種』、中国型の開発理論とネオリベラル型の市場理論を比較した『自由市場の終焉』、『国家は破綻する』の6冊を取り上げます。 (続きを読む…)

2011/7/19 火曜日

米国の労働組合運動の最新事情:保守化の逆風に晒される労組

Filed under: - nakaoka @ 1:40

アメリカの保守化は政治や経済、社会に留まりません。労働組合運動も激しい保守化に直面しています。ニューディール政策でアメリカの堂々組合運動は大きく前進しました。1935年に会社の労働組合運動への干渉を禁止したワグナー法が成立し、国家労働関係委員会(National Labor Relations Board)が設置され、労働者の権利は守られるようになりました。ただ、戦後、1947年にワグナー法を改正するタフト・ハートレイ法(Taft-Hartley Act)が成立し、組合の権限を制限する労働権(the right to work)が成立し、ニューディール政策の揺り戻しがありました。企業はクローズド・ショップを採用している北部諸州から、オープン・ショップ(労働権)を求めている州に工場を移してきました。最近の保守派の労働組合攻撃は公務員の団体交渉権に向けられています。こうした動きに対して、リベラル派は自由に組合を結成できる「従業員自由選択法(Employee Free Choice)」を提出して抵抗しています。ボーイング社が工場を労働権を認める州に移転することを巡って、論争が起っています。 (続きを読む…)

2011/7/17 日曜日

フランクリン・ルーズベルト大統領に見る政治家の指導力

Filed under: - nakaoka @ 0:11

人の本当の能力は、危機に直面したときに初めて試され、評価できるものである。特にそれは政治家についていえる。現在、日米は大きな危機に直面している。両国の菅直人首相、オバマ大統領ともに指導者としての能力を十分に発揮しているとは言い難い。危機に際して国民に明確な方向性を示し、大胆な政策とビジョンで国家を救ったのは、フランクリン・ルーズベルト大統領である。大恐慌に際して、どのような指導力を発揮したか見てみよう。 (続きを読む…)