中岡望の目からウロコのアメリカ

2005/10/9 日曜日

ブログを始めて1年が経ちました:「ブログ」のジャーナリズムとしての可能性と9月の利用状況

Filed under: - nakaoka @ 11:12

本ブログを始めたのが1年前の10月です。カンボジア旅行から帰ってすぐに書いた原稿が最初の原稿です。この1年間に書いた記事の本数は140本を越しています。3日に1本程度のペースで書いてきた勘定になります。ただ、今年の春からなかなか時間が取れず、1ヶ月数本という月もありました。こうして記事を累積してみると、この1年のアメリカの政治、経済、社会の動きが、それなりに見えてくるのではないかと思います。非常に幸いなことに、過去に書いた記事も頻繁に読まれていることです。9月に読まれた記事の件数は138本でした。その時点、その時点で書いてきたものですが、それなりに情報価値があるのではないかと自負しています。9月の最大の特徴は、「アメリカの最悪の仕事トップ10」が猛烈に読まれたことです。従来の本ブログの読者以外の人にたくさん読まれました。特に若い人のブログでたくさん紹介されました。その結果、1日としては最高の3万2000件を越すヒット件数がありました。改めてネットの影響力を感じました。同時に、こうしたアメリカ社会の現実に対して様々な反応があったことに非常に興味を覚えました。以下で、この1年の感想を9月の利用状況を報告します。

フリーのジャーナリストがメディアで書き続けるのは大変なことです。問題意識を持っても、発表する場がないことが多いのです。私の場合、幸いに書くチャンスに恵まれてきました。しかし、それでも書ききれない情報や問題意識があります。従来ですと、そうした情報は死蔵され、いつか机の片隅で忘れられるのですが、ブログという発表手段を得たことで、常に自分の問題意識を新鮮な形で持ち続けることができました。これは、従来にないことです。読者も着実に増加し、1つの記事を少なくとも千単位の読者に読んでもらっています。本ブログは、他の一般のブログと違い、必ずしも双方向のコミュニケーションを行なっていません。これは敢えて、そうしているからです。情報を提供するが、判断は読者に任せるというのが、本ブログの基本的な方針です。ですから、物足りなく思われる方もおられるのではないかと思います。でも、こうしたブログがあってもいいのではないかと思っています。

時間があれば、もっと文化的な問題や社会問題を取り上げたいと思っています。事実、「アメリカの最悪の仕事」が信じられないほど読まれたのも、政治や経済だけでなく、アメリカ社会の現実を知りたいという人々が多いのでしょう。常にテーマを数本持っています。そのうち実際に調べて書けるものは限られています。その中で情報価値のあるものをできるだけ選んで書きたいと思っています。

新聞や雑誌と比べて、本ブログは幾つかの点で優っている点があるのではないかと思います。それは「速報性」と「情報量」の多さです。たとえば、2月に開かれた日米の「2プラス2」(アメリカの国務長官と国防長官、日本の外務大臣と防衛庁長官の4名の会議)の共同声明は、発表後、数時間のうちに全訳を本ブログで掲載しました。それに対するアクセスも非常に多かったのを覚えています。またライス国務長官の上智大学での講演も、直接取材をして、即座に詳細な報告を書きました。この記事も非常に多くの読者に読まれ、9月になってもトップ10の中に入っています。「インテリジェント・デザイン」の原稿は、いろいろな分野の人に読まれ、反響もありました。いずれも、どの新聞よりも、どの雑誌よりも、「速報性」と「詳細な内容と分析」で優っていたと自負しています。

アメリカではブログがすでに主流派のメディアを凌駕する状況も見られます。大手の新聞や雑誌のホーム・ページには必ず「ブログ」の欄があります。また記事の中にもブログが直接引用されるケースも増えています。政治に与える影響も大きいものがあります。それに関しては、大統領選挙に関する本ブログで「選挙は情報戦争である」(ブログ)という記事のなかでアメリカの政治ブログの動きを説明しました。遠からず、日本でも似たような状況が起こるのかもしれません。ただ、フリーのジャーナリストにとって痛し痒しなのは、ブログを書くことが収入には結びつかないことです。アメリカの有力なブログでは、読者の寄付を求めているものもあります。

いずれにせよ、この1年間、ブログを通して、いろいろなことを学びました。ヒット件数も昨年の10月は千件台でしたが、この9月は37万件に達しています。ブログの内容からして、そんなに読者数が増えるものではないと思っています。ヒット件数よりも、問題意識を共有できる読者が増えることを期待しています。

9月に読まれた記事の本数:138本

9月のヒット状況
ヒット件数:37万7016件
ユーザー数:16万0148人
リピート率:16%
9月末の記事件数:146件
9月中に読まれて記事の数:138本

9月に読まれた記事トップ10
1位:アメリカで最悪の仕事トップ10は何か:社会の最下層で働く人たち
2位:国連安全保障理事会の拡大に対するアメリカの基本政策と日本の国連における投票行動
3位:アメリカにおける「進化論」を巡る論争再論(1):ブッシュ大統領が「インテリジェント・デザイン」論を支持
4位:統計から見るアメリカの家庭の現実:増える単身世帯と貧困層
5位:これからの円相場をどうみるべきか:基調は円高だが・・・
6位:ダイエー創業者中内さんへの思い:彼の訃報に接して
7位:米上院司法委員会、ジョン・ロバーツの最高裁長官人事を承認:『世界週報』9月27号の記事も転載
8位:グリーンスパンFRB議長の”最後の警告”:カンサス・シティ連銀主催の会議での演説
9位:ライス国務長官の上智大学での講演と、『世界週報』に寄稿した拙稿「ライス長官の下でアメリカ外交政策はどう変わるか」の全文転載
10位:2008年の大統領選挙は”女の戦い”か:世論調査の結果ではアメリカ国民は女性大統領を望んでいる

8月の利用状況
8月のヒット件数:32万6846件
ユーザー数:11万8335
リピート率:21%

8月に最も読まれて記事トップ10
1位:我が友、永岡洋治君への鎮魂
2位:石油先物価格が史上最高値:最近のコモディティ市場の動向をどう理解すべきか
3位:番外編:日本映画に未来はあるか?
4位:なぜ最高裁判事の使命が重要問題なのか:判事に指名されたジョン・ロバーツとは何者か
5位:ヘッジファンド入門:ヘッジファンドは為替市場・株式市場にどんな影響を与えるのか
6位:国防省の軍事政策に変更はあるのか(1):リセス・アポイントメントで相次いで決まる国防省人事
7位:混迷続くボルトン国連大使の議会承認
8位:「ホワイトハウスの必読書―これがブッシュの中東民主化政策の理論的支柱の本」
9位:2008年の大統領選挙は“女の戦いか”:世論調査ではアメリカ国民は女性大統領を望んでいる
10位:国防省の軍事政策に変更はあるか(2):新スタッフでネオコン色は薄まるか

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