中岡望の目からウロコのアメリカ

2007/1/21 日曜日

ヒラリー・クリントン上院議員、正式に大統領選挙出馬の意向を明らかにする:同議員の「声明の全訳」と現在の民主共和両党の立候補状況

Filed under: - nakaoka @ 11:06

2008年の大統領選挙が本格的に始まりました。民主党と共和党から相次いで大統領候補を表明、あるいは立候補に備えた調査委員会を設置する政治家が相次いでいます。選挙の投票日は2008年11月4日です。党の公認候補になるためには、まず来年の夏までに各州の予備選挙を勝ち抜き、夏に行なわれる党大会で正式に党候補の承認を得なければなりません。要するに党大会までのほぼ1年半にわたる“サドン・デス”の党予備選挙を勝ち抜いて、初めて大統領候補になれるのです。民主党は当然のことながら、共和党もブッシュ大統領の3選がないため、次の選挙は新人の争いになります。民主党では2000年の大統領選挙で民主党候補であったゴア元副大統領や2004年の大統領選挙で大敗したケリー上院議員なども再チャレンジを期しています。また黒人のオバマ上院議員も有力な候補者として急浮上しています。最大の注目であったヒラリー・クリントン民主党上院議員は1月20日にホーム・ページで立候補のための“調査委員会”を設置することを発表しました。これは事実上の立候補宣言です。以下、同議員の「声明」の翻訳と、現時点で両党の大統領予備選挙出馬表明をした者と調査委員会を設立した者と設立予定のリストを掲載します。さらに最新時点の世論調査の結果も掲載。

ヒラリー・クリントン上院議員の「出馬声明」は以下の通りです。

私は(大統領選挙に)出馬します。そして(選挙に)勝ちます(I’m in. And I’m to win)。今日、私は大統領選挙に出馬するために調査委員会(exploratory committee)を設置することを発表します。

私は皆さんに私の選挙運動だけのためではなく、アメリカの将来についての対話にも参加していただきたいと思っています。私たちが必要としているブッシュ政権が6年にわたって犯した失敗を克服するために大胆で実際的な変化についての話し合いに参加してくださるようお願いいたします。

私はアメリカ国民と直接対話をするつもりです。これから数日にわたって私のホーム・ページで行なう話し合いにすべての皆さんご招待することで、対話を始めます。

アメリカが2008年に新しい大統領を選ぶチャンスは(stakes)は大きいのです。

私は上院議員としてこれからの2年間、ジョージ・W・ブッシュが与えるダメージを阻止するためにできることすべてを全力でするつもりです。しかし、新大統領だけがブッシュの過ちを正し、アメリカに希望と楽観主義を取り戻すことができるのです。新大統領だけが、“アメリカの約束”(the promise of America)を新たにすることができるのです。その約束とは、誰でも一生懸命に働けば、健康保険と教育と家族を養うために必要な定年後の安全を手に入れることができるということです。これらは、現政権が毎日のように攻撃しているアメリカの基本的な価値なのです。新大統領だけが、世界で尊敬される指導者としてアメリカの地位を回復することができるのです。

私は2008年11月4日に変化が訪れると信じています。私は皆さんと一緒にこの国が必要な指導力を取り戻すことができると信じているからこと、(立候補のための)調査委員会を設置することにしたのです。私は、私たちの国を正常な状況に戻すためにどのような努力ができるかについて国民的な対話を行なうことで選挙運動を始めるつもりです。

この大統領選挙は、非常に大きな幾つかの問題を抱えた重要な選挙なのです。どのようにしたらイラク戦争に正しい結末を付けることができるのでしょうか。どのようにしたらすべてのアメリカ人に十分な健康保険を確実に利用できるようにすることができるのでしょうか。どのようにしたら子供たちにクリーンな環境とエネルギーの自立を継承させることができるのでしょうか。どのようにしたら社会保障制度と低所得者や障害者向けの公的医療保険制度(Medicare)を脅かしている財政赤字を削減することができるのでしょうか。

どこに住もうと、どんな政治的な意見を持っていようとも、皆さんに最初からこの重要な対話に参加していただきたいと思っています。まず私はこれから数日間、ライブ・ビデオによってホーム・ページ上で行なう議論を通して皆さんの質問に答えます。1月22日午後7時(東部時間)から3日間、連続で対話を行ないます。私は、どうしたら私たちはより良き未来を作るために、どのように協力することができるかについての皆さんの質問にじっくりお答えするつもりです。皆さんは、私のホーム・ページ上でライブの対話に参加することができます。ここで対話へ参加するために署名をしてください。

私は、アメリカ中部の中産階級の家庭で育ちました。そこで私は、私たちが協力し、自分たちの価値観に対して誠実であれば、どんな障害も克服できることを学びました。私は、私のほぼ全ての人生を捧げて、私たちの国にとって重要な問題に取り組んできました。私は30年以上にわたって子供たちのために戦ってきました。アーカンソー州で教育改革に取り組んできました。ファースト・レディーとして、私は何百万人の子供たちへ健康保険を適用することや、養子縁組を劇的に増やす法案の成立を支援してきました。また、私は女性の権利と人権を確かなものにするために中国にも行きました。

上院では、私は子供の健康保険のために何百万ドルもの資金を獲得し、大統領の社会保険制度の民営化計画を阻止し、9・11の連続テロ事件の犠牲者や英雄、男女を問わず軍隊の兵士が公平な扱いを受けられるようにするために党派を超えて努力してきました。2006年に、私は「プランB」の避妊措置が処方箋のない女性にも適用できるように戦い、成功しました。

私は、家族を養うために懸命に働いている何千万人の人々に機会を与えるために、私の生涯を費やしてきました。それらの人々は、新しい移民であったり、貧困な生活をしている人々であったり、健康保険を持っていない人々であったり、あるいは退職後の見通しのたたない人々です。

“アメリカの約束”とは、私たちすべてが機会を手に入れることができるということです。私は、その約束を新たにするために2008年の大統領選挙運動を戦いたいと思っています。その選挙運動は(私の)生涯をかけた実績に基づいて行なわれるものです。

皆さんにこの選挙運動に参加していただく必要があります。私は、この国民的対話を通して私(の活動)に参加していただきたいと思っています。大統領選挙に勝つために選挙運動を通して、私たちは歴史を作り、将来を作り直すことになるでしょう。障害に断固として立ち向かい、他の人々を助けるというために断固として決断と約束をするなら、それによって初めて障害を克服することができるのです。

この選挙運動は、私たちが抱いている原則と価値観のために立ち上がり、新しい思想、エネルギー、指導力を今までにないような挑戦に満ちた時代のために回復する絶好の機会であり、チャンスなのです。今こそ、「私たちはできる(We can)」、「私たちは意思がある(We will)」と言う絶好のチャンスなのです。

一緒に働くために前進しましょう。アメリカの将来が私たちに呼びかけているのです(America’s future is calling us)。
(以上)

以下、大統領選挙の立候補状況です。

<民主党>
正式に立候補声明をした者と立候補を発表した日

1. コネチカット州選出上院議員:Christopher J. Dodd (2007年1月11日)
2. ノース・カロライナ州選出元上院議員:John Edwards (2006年12月28日)、なお彼は2004年の大統領予備選挙に立候補した有力候補の一人
3. 元アイオワ州知事:Tom Vilsack (2006年11月30日)
4. オハイオ州選出下院議員:Dennis J. Kucinich (2006年12月12日)
5. 元アラスカ州選出上院議員:Mike Gravel (2006年4月17日)

調査委員会(exploratory committee)を設立した者
1. デラウエア州選出上院議員:Joseph R. Biden (今月中に連邦選挙委員会に登録し、1月中に委員会を設立することを公表済み)
2. イリノイ州選出上院議員:Barack Obama (2007年1月16日に調査委員会設立を発表。2月10日までに最終的に大統領選挙に立候補するかどうかを決定する)
3. ニューヨーク州選出上院議員:Hillary Rodham Clinton (2007年1月20日)

民主党候補の支持率調査(1月17日実施)
Hillary Clinton 29%
Barack Obama 18%
John Edwards 13%
Al Gore 11%
John Kerry 8%

<共和党>
正式に立候補表明者
1. イリノイ州司法長官John H. Cox (2006年3月9日)

調査委員会を設立した者(連邦選挙委員会に届けた日)
1. テネシー州選出下院議員Ron Paul (2007年1月11日、ただ州選挙委員会への届出だけで、まだ連邦選挙委員会には届出は行なっていない)
2. アリゾナ州選出上院議員 John McCain (2006年11月16日)
3. 前ニューヨーク市長 Rudolph Giuliani (2006年11月20日)
4. カンサス州選出上院議員Sam Brownback (2006年12月1日)
5. 前ウィスコンシン州知事Tommy G. Thompson (2006年12月13日)
6. 前バージニア州知事James S. Gilmore (2007年1月9日)
7. 前マサチューセッツ州知事Mitt Romney (2007年1月3日)
8. カリフォルニア州選出下院議員Duncan Hunter (2007年1月12日)
9. 前コロラド州選出下院議員Tom Tancredo (2007年1月16日に調査委員会設立の意向を表明)

共和党候補の支持率調査(1月17日実施)
Rudy Giuliani 31%
John McCain 27%
Newt Ginglich 10%
Mitt Romney    7%

<コメント>
現在、民主党で最も活発な選挙活動をしているのは、2004年の予備選挙に立候補し、一時は他の候補を大きくリードしていたエドワーズ元上院議員です。また、急激に注目されているのがオバマ上院議員です。彼はイリノイ州選出の上院議員で現在一期目です。アフリカ系アメリカ人ですが、世論調査ではクリントン議員と拮抗する支持を得ています。もし彼が大統領候補になれば、アメリカの政治史上、重大な意味を持つことになるでしょう。これは想像の話ですが、ヒラリー大統領候補、オバマ副大統領候補になると、女性とマイノリティ(アフリカ系アメリカ人)というかつてない組み合わせになります。2000年の大統領選挙で惜敗したゴア前副大統領も環境問題を訴えながら、再び注目されています。本人は出馬の意向を明らかにしていませんが、予備選挙の動向いかんでは再登場もありえます。また、2004年の大統領選挙に出馬したケリー上院議員は、昨年の中間選挙前に失言(イラクに行っているのは学業の悪い青年であるといった趣旨の発言。ただ、この発言は必ずしも正確には報道されておらず、誤解の部分がかなりある)があり、大きく後退しましたが、依然として立候補の意欲は持っているようです。

他方、世論調査では、共和党はジュリアーニ元ニューヨーク市長がリードしているようです。2000年の共和党大統領予備選挙でブッシュ大統領と争ったマケイン上院議員も依然として有力候補です。また、ロムニー前マサチューセッツ知事も有力候補です。

大統領選挙は長丁場です。まず党の予備選挙に勝利しなければなりません。その結果によって選挙資金の集まり方が変わってきます。また、マスコミの様々な報道に耐えなければなりません。スキャンダル報道やリポーターの厳しい質問にも対応していかなければなりません。また、政策綱領を発表し、様々な専門家によって批判的に検討されます。勢いがついてくると、選挙資金だけでなく、多くの優秀なボランティアも集まってきます。その結果を予想するのは困難です。第4コーナーまでトップで走っていた候補が急速に失速することもあります。1つのスキャンダルで、すべてを失う候補者も出てきます。2008年の8月に開催される党の全国大会でどの候補が受諾演説をしているのでしょうか。これから、本ブログでも詳細に大統領選挙の動向を分析していくつもりです

1件のコメント »

  1. [...] ヒラリー・クリントン上院議員、正式に大統領選挙出馬の意向を明らかに …2008年の大統領選挙が本格的に始まりました。民主党と共和党から相次いで大統領 候補を表明、あるいは立候補に備えた調査委員会を設置する政治家が相次いでいます。 選挙の投票日は2008年11月4日です。… [...]

    ピンバック by music@pickup-keyword.com » [2007年1月23日] の注目キーワードリスト — 2007年1月23日 @ 21:31

このコメントのRSS
この投稿へのトラックバック URI
http://www.redcruise.com/nakaoka/wp-trackback.php?p=202

コメントはお気軽にどうぞ