中岡望の目からウロコのアメリカ

2008/7/30 水曜日

原油高と中国経済:石油製品の価格統制で原油高の影響を遮断

Filed under: - nakaoka @ 9:59

中国の国営企業で元売の中国石油が大幅な人員削減を発表しました。理由は簡単です。原油高を製品価格に転嫁できず、収益が悪化したからです。なぜコスト高を製品価格にできないかといえば、中国政府が石油製品の価格を統制しているからです。インフレと貧富の格差が拡大するなかで、中国政府にとってガソリンなどの価格を低く抑えておくことは政治的に重要なのです。しかし、そのことで市場機能は歪められ、中国は石油製品に対する過剰需要が常に存在しています。昨年の11月と今年の6月に中国政府はガソリンやディーゼルの小幅な値上げを実施しました。しかし内外格差は依然として大きなものです。今回は原油高と価格統制と中国経済について分析します。

原油価格は1バレル140ドル前後で推移している。原油価格の上昇はさらに続き、200ドルまで上昇すると予想する専門家もいる。こうした急激な原油価格上昇の背景に発展途上国が高成長を続け、石油需要が急激に増加する中で、石油産業の長期的な投資不足の結果、供給制約が表面化していることがある指摘されている。
また投機的な資金が石油先物市場やオプション市場に大量に流入していることも、異常な原油価格の上昇の一因であると指摘されている。こうした中で中国が原油価格上昇の最大の要因であると指摘する専門家も多い。

では中国の原油需要の状況は実際にどうなっているのであろうか。中国は米国に次ぐ世界第二位の原油消費国である。しかも二桁成長が続くなかで原油消費量と輸入量が増えており、世界の原油価格に大きな影響を与えていることは間違いない。

世界の原油需要の中で中国の占める比率は着実に上昇している。2005年の世界の原油需要は一日当たり8380万バレルで、中国は669万バレルと世界の需要の8%を占めていた。その比率は2006年に8・5%、2007年には8・8%に上昇している。国際エネルギー機関(IEA)は、2008年の世界の原油需要は一日当たり8677万バレルで、中国の需要は795万バレルと世界の需要の9・2%を占める予想している。今の状況が続けば、中国の原油
需要が世界の需要の10%に達するのは、そう遠い将来ではないだろう。

中国の原油需要の伸び率も高い。2005年の世界の原油需要の増加率は1・6%であったが、中国は4・2%と非常に大きな伸び率を示している。2006年も世界の需要増加率が1・3%に対して中国は7・8%、2007年は1・3%に対して4・6%であった。IEAの予想では、今年は世界の原油需要の伸びは0・9%と低水準に留まるのに対して中国の需要は5・5%増加する。

中国の一日当たりの原油消費量は約800万バレルで、国内産油量は日産383万バレルに過ぎず、その差の4200万バレルは輸入によって充当されている。イギリスの『エコノミスト』誌は、原油高の最大の要因は単なる現在の需給関係を反映しているだけでなく、将来も中国の原油需要の増加が続くという予想が根底にあると分析している。要するに、中国の高成長が続けば、世界の原油需要は着実に増加することは間違いなく、将来にわたって原油価格の下落はないという予想が、現在の原油価格の上昇に繋がっているという。原油は中国のエネルギー供給の約20%を占めるに過ぎない。主なエネルギー源は石炭や水力であるが、環境問題などから原油の比率は今後も高まっていくと予想される。

6月18日に米国で注目される動きがあった。ヒラリー・クリントン上院議員を含む16名の民主党の上院議員が連名でブッシュ大統領に書簡を送り、中国に石油製品の価格統制の廃止を要求すべきであると訴えたのである。中国政府は国内の石油製品に対して補助金を与え、価格を低く抑える政策を取っている。そのことが中国で石油製品に対する過剰需要を作り出し、間接的に原油価格上昇の一因となっているというのが、価格統制の廃止を求める理由であった。

こうした動きに対して中国政府は昨年11月に国内の燃料価格を10%引上げている。そして今年の6月19日にさらにガソリン価格を17%、ディーゼル価格を18%引上げることを発表した。この発表を受けて原油価格は一時下落したが、これは中国の原油需要の動向がいかに原油価格に大きな影響を与えているかを示す証拠であろう。中国政府によると、この価格引上げによって、ガソリンの国内販売価格は1ガロンで3ドル程度上昇するとみている。また電力料金も約5%程度引上げられる。ガソリン価格上昇を受け、バス代やタクシー代などが引上げられている。

しかし原油価格の急騰からすれば、この管理価格の引き上げは極めて小幅に留まっている。これが中国の原油需要の増加にブレーキをかけるとは思われない。中国の石油製品の国内価格と国際価格の差は極めて大きい。中国の石油燃料価格は国際相場の半分程度であり、モルガン・スタンレー証券は内外価格差を解消するためには中国政府は国内価格を70%から80%引上げる必要があると推計している。

こうした石油製品の内外格差は政府の補助金で充当されている。モルガン・スタンレー証券の推計では中国政府は2007年で直接的な政府予算を通した補助金の給付や国営石油会社の収益圧縮という間接的な補助金の合計は270億ドル、GDP比で0・8%に達している。さらにモルガン・スタンレー証券は、もし原油価格が130ドル程度で推移し、国内の石油製品価格を現状の水準に保つとすれば、二〇〇八年には直接・間接の補助金の総額は1000億ドル、GDP比で2・2%に達すると推計している。

中国の財政は日本などと比べると極めて健全な状況にあり、ある程度、補助金を増やすことは可能である。事実、今回の引き上げに際しても中国政府は値上げで影響を受ける漁業、林業、公共交通、都市部のタクシー会社、米作農家へ補助金を与えることを決めている。特にタクシー業界では運転手に直接現金で補助金を給付することを決めている。
中国政府が石油製品の価格統制を行なっている理由は幾つか指摘されている。ひとつは貧富の格差が拡大するなかで貧困層の負担軽減を図る必要があるからだ。特に公共交通機関の料金の上昇は貧困層を直撃する。さらに中国インフレ率は8%台と極めて高水準になっており、世界の原油価格上昇が直接国内物価に反映されれば、インフレ率はさらに上昇することは間違いない。中国がそうした高インフレに耐えられる状況ではない。10%程度の燃料価格の引き上げだと、インフレ率は0・3ポイントから0・4ポイント上昇すると見られる。

石油価格の統制で中国経済は原油高の国内経済に与える影響をある程度遮断しているのである。その代償として補助金の額が増加し、石油会社の収益が悪化するという対価を払っている。問題は、こうしたエネルギーの統制価格の引き上げが需要にどのような影響を与えるかである。昨年11月の引上げ後の状況をみるとほとんど需要減退は見られず、原油輸入は増え続けている。おそらく6月の価格引き上げも、需要抑制効果は薄いだろう。また8月のオリンピック開催に備えて中国は石油備蓄を増やしており、短期的には原油輸入はさらに増加するという予想もある。

中国経済の大きな課題はいかにしてエネルギー原単位を引き下げるかにある。すなわち効率的なエネルギー利用を実現し、原油へのエネルギー依存を引き下げる必要がある。そのためにはエネルギー・コストを上昇させていくことが必要である。しかし、現在の社会状況やインフレ状況から判断する限り、中国政府は一気に統制価格制度を廃止し、エネルギー価格の上昇を許容できない状況に置かれている。

本来なら原油価格上昇を国内の石油関連商品の価格に転嫁させることでエネルギーの効率的な利用を促進することが一番好ましい。しかし、それを実現するにはある程度の時間が必要である。しかし急激な価格引上げはインフレ高進だけでなく、短期的に社会不安を醸成する懸念もある。相対的に言えば、原油価格の上昇が中国経済の大きな成長抑制要因になるとは思えないが、中国の抱える問題を一層鮮明にしていることは間違いない。
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1件のコメント »

  1. スペインはベネズエラと1バレル100ドルでの取引を交渉しているようです。

    コメント by satoco gracia — 2008年7月30日 @ 13:38

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