中岡望の目からウロコのアメリカ

2004/11/16 火曜日

パウエル国務長官、辞任へ

Filed under: - nakaoka @ 5:51

以下の内容は、アップ後、事態が急激に進んでしまい、内容的に古くなりました。執筆時点の状況と情報をベースに書いたことをご留意ください。なお、パウエルとライスの問題については、近いうちに新しい原稿をアップするつもりです。

今、16日の午前5時半です。『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙の電子メールが「パウエル国務長官がブッシュ大統領に辞表を提出した」と伝えました。パウエル長官以外でも、既に相次いでブッシュ政権から離脱するスタッフが増えています。アメリカの政界は”リボルビング・ドア”といって、民間と政府の間を行ったり来たりするのが普通です。閣僚など高官の職務を経験して民間に天下る人と、民間から政府のポストを狙っている人がいます。政権交代によって大幅に人事が動きます。大統領が交代しなくても、2期目の閣僚は大幅に代わることがあります。ワシントンの最大の話題は、第2次ブッシュ政権の人事です。大統領選挙の論功行賞を含め、水面下で猛烈な人事抗争が展開されている。現時点での人事の動きを以下で整理してみます。

既に閣外に去ることが決まっている大物は、ジョン・アシュクロフト司法長官とドナルド・エバンス商務長官です。アシュクロフト司法長官は健康問題があるうえ、ブッシュ大統領との関係が必ずしも良好でなかったことが、辞任の理由と見られています。彼の後任は、メキシコ系アメリカ人のアルバート・ゴンザレスが既に決まっています。また、エバンス商務長官の有力な後任候補と見られているのが、ブッシュ大統領の選挙運動の選挙資金委員長を務めたマーサー・レイノルズです。もしレイノルズが商務長官に就任すれば、典型的な論功行賞人事となるでしょう。エバンスは30年以上にわたるブッシュ大統領の盟友であり、今回の辞任は将来、テキサス州知事選挙に出馬するためだといわれています。

そしてなによりも人事の最大の焦点は、コリン・パウエル国務長官の去就でした。外交政策を巡ってホワイトハウスの強硬派との対立が伝えられるだけに、多くのメディアは彼の辞任は時間の問題と見ていした。そして、大方の見方通り、15日にパウエル国務長官は辞表を提出しました。焦点は、次の国務長官人事に移ります。その候補として噂されているのが、安全保障問題首席補佐官のコンドレッサ・ライスです。ただ、ライス首席補佐官はは外交儀式を強いられる国務長官よりも、国防長官に対して強い関心を持っているといわれます。彼女以外では、元共和党議院で、現国連大使のジョン・ダンフォースの名前も挙がっています。アジア担当のリチャード・アミテージ国務副長官の去就も注目されています。彼に関しては様々な見方があり、一部にはパウエル長官に追随して辞任すると見る向きもありますが、その幅広い外交力を評価して国務長官に推すグループも存在します。いずれにせよ、後任の国務長官人事が当面の最大の課題となるでしょう。

では、ライス首席補佐官が国防長官になる可能性はあるのでしょうか。ドナルド・ラムズフェルド国防長官はイラク戦争や米軍の国際的再配備など多くの軍事的な課題を抱えており、まだ意欲的な姿勢を崩していません。同国務長官はチェイニー副大統領とも近く、しばらくはその座に留まることになるでしょう。となると、ライスが希望通りに国防長官になる可能性は小さいといえます。もし国防長官就任の可能性がないとなると、ライスは主席補佐官の職を辞して学界に戻るとの推測がもっぱらです。その場合、後任として名前が挙がっているのが、ライスの副首席補佐官スティーブン・ハドリーと国防副長官のポール・ウォルフォウイッツです。ただ、ウォルオウイッツは代表的なネオコンで、イラク戦争で批判の的となっているだけに、すんなり横滑りできるかどうか疑問です。

ナショナル・エコノミック・カウンシル(国家経済委員会)のディレクターのスティーブン・フリードマンも、USTR(米通商代表部)代表への横滑りを望んでいると伝えられています。現USTRのロバート・ゾーリック代表は、別のポストを望んでいるので、この横滑り人事は実現する可能性は大きいかもしれない。

こうした人事異動が、第2期ブッシュ政権の政策にどのような影響を与えるかです。今後、その点に焦点を当てながら、情報を提供していきたいと思っています。

PS:
日本のメディアは、ライスが国務長官に決定と報道していますが、まだ確定ではありません。この時点でも、アメリカのメディアの見方は分かれています。アミテージ副長官については、ホワイトハウスの記者会見でパウエルと行動を共にすることを示唆する説明があったことからすると、辞任することはほぼ間違いないでしょう。

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