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2009/8/19 水曜日

自民党のマニフェストを読む：自民党に必要なのは過去の政策の総括

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経済

- nakaoka @ 22:16

総選挙が公示されました。８月の投票日に向けて各党の選挙運動が展開されます。今回は選挙前から各党のマニフェストが発表され、その評価を巡って様々な議論が行われてきました。本欄では、前回、「民主党のマニフェストを読む」と題して、民主党の政策のポイントを整理しました。今回は自民党のマニフェストについて分析してみることにします。

マニフェストは、政権を取ったら実行する政策を示すものです。ただ、現在、与党である政党の場合、政権を維持した場合の政策を論じる前に、過去の実績を問う必要があるでしょう。また、民主主義というのは政権交代が円滑に行われる制度のことです。どんな良い政策を持つ政党も長期間、権力の座にあれば様々な既得権が発生し、いろいろな形で問題が出てくるものです。日本は先進民主国家では異例とも言える政治状況が続いてきました。細川政権の誕生など極めて短期間を除き、自民党が単独、あるいは連立で政権を維持し続けてきました。

たとえばアメリカの場合、常に政権が変わってきました。戦後だけを見ると、1945年に民主党のトルーマン政権が誕生しました。しかし53年に共和党のアイゼンハワー政権が民主党政権に取って替わり、61年に民主党のケネディ政権が誕生。ケネディ大統領が暗殺された後、ジョンソン副大統領が大統領に就任。69年に共和党のニクソン政権が誕生。ウォーターゲート事件で辞任したニクソン大統領の後をフォード大統領が継いできます。しかし、77年に再び民主党のカーター政権が誕生。81年に保守主義を掲げた共和党のレーガン政権が政権を奪取しています。89年にレーガン政権のブッシュ副大統領が大統領に選出され、共和党政権を継続。しかし、93年に民主党のクリントン候補が僅差でブッシュ大統領を破って政権を樹立。2000年に再び共和党のブッシュ政権が誕生し、08年に民主党のオバマ政権が誕生しています。この間、下院では民主党と共和党が何度も交代を繰り返しながら、多数派をしめています。アメリカの政治では政府と議会、上院と下院の間の“ねじれ関係”は常に怒っています。それがアメリカの民主政治なのでしょう。

【過去の政策評価】
野党と違って、与党の場合、過去の政策について検証と評価をする必要があります。マニフェストは将来の政策を示すものですが、与党はまず自ら政策評価を行い、また第3者の客観的な評価を受ける必要があります。一般の有権者が正確な評価をするのはほぼ不可能です。良くアメリカの選挙で候補者が訴えるのは、「前の選挙の時と比べて今の生活が良くなったのか」というのがあります。これは実感として感じる政策評価の仕方でしょう。この４年間に何が良くなり、何が悪くなったのかを自分に問いかけてみることが、まず大切でしょう。ただ、どんな政府でも国際金融危機のように制御不能な事態はあるもので、すべて政府のせいにすることはできませんが、政府がどう対応しようとしたのか、どう対応したのかを問うことは可能でしょう。また政府は常に“結果責任”を負うものです。どんな理由であれ、その責任を負うというのが政府与党の宿命でしょう。意図が良ければ免責されるものではありません。

過去の政策評価として、21世紀臨調が８月２日に開催した「政権実績検証大会」があります。そこでは経済同友会、全国知事会、連合、日本青年会議所、言論NPO、PHP総研、日本総研、構想日本、チーム・ポリシーウォッチの９団体が集まって、それぞれの評価を発表しました。評価のポイントは、①自公連立政権の4年間の政権運営の実績、②同政策に関する実績評価です。以下では政策に関する評価を紹介します。

経済同友会は政策に関して100点満点で50点の評価を与えています。「世界同時不況の経済危機に際して日本経済の底割れリスクを回避するために機動的に短期間で緊急経済対策をとりまとめた」ことを高く評価しています。しかし、同評価では、景気政策の内容の評価には立ち入っていません。たとえば「定額給付金」などの政策がどれだけ有効であったのかといった具体的評価には言及していません。ただ単に迅速に大規模な景気対策を講じたというだけでは、評価の対象にはならないのではないかと思います。また、「郵政民営化、養育改革、憲法改正、東アジア外交、国際平和活動等は一定の成果を上げた」としていますが、これも政治的な立場によって評価が異なるでしょう。あくまで経済同友会の立場から見てということで、必ずしも国民的な立場から見た評価とは言えないでしょう。マイナスの評価としては、「行政改革、規制改革、地方分権改革等の一連の構造改革は2007年参議院選挙後、大きな進展は見られなかった」と厳しい評価をしています。これは妥当な評価でしょう。また「最重要な課題である歳出・歳入一体化改革や社会保障制度の抜本改革はすべて先送りされた」と、ここでも厳しい評価がくだされています。また、経済同友会は景気対策に対して高い評価を与えているのですが、「緊急経済対策により“骨太の方針2006”以来、着実に積み上げられてきた財政規律維持と財政再建の実績が崩壊した」と、矛盾する指摘もしています。経済同友会はどちらかといえば自民党寄りの団体であり、そこからも自公連立政権は厳しい評価を受けているのです。

また自民党に発想が近い日本青年会議所の評価はどうでしょうか。政策運営に関する評価は、50点満点で22点との評価でした。「官僚主権国家から国民主権国家へと転換するために明治以来続いてきた我が国の官僚制度にくさびを打ち込んだという１点において、ある程度の評価はできる」と指摘しています。これも評価の仕方によるのでしょうが、本当に自公連立政権が官僚主権国家にくさびを打ち込んだと言えるのでしょうか。たしかに、「キャリア制度の廃止」は評価できるでしょうが、日本のあるべき姿という観点から見ると、まったく不十分な感じもしないではありません。「一点突破全面展開への始まりの一歩として評価したい」という指摘は、経済同友会は基本的に自民党支持団体であることを示している希望的なコメントでしょう。それにしても、政策評価には厳しいものがあります。なお、同会議所は教育政策に関して100点満点で50点の評価を与えています。具体的には「教育基本法が平成18年12月に改正、またそれに伴い学習指導要綱も改正され、教育改革が進行していることは一定の評価ができるが、文面の変更以降の進展は見えない」と指摘しています。教育基本法の改正の内容の評価が問題でしょう。これも立場によれば、後退との見方もあります。法律は改正したが、実行は伴わないというのが同会議所の評価ですから、50点は甘すぎる評価かもしれません。

では反自公政権の立場にある連合（日本労働組合連合会）の評価はどうでしょうか。政策に関する総合評価は100点満点の30点と極めて厳しい評価が下されています。「2005年総選挙での自民党マニフェストのテーマは“改革の流れに勢いを”、“日本の産業にたくましさと活力を”、“誰もが不安なく暮らせる日本へ”、“子どもたちに確かな未来を”、“世界に胸を張れる日本へ”であった。これらは何ひとつ前進することなく、むしろこの４年間では状況はより深刻な事態に立ち至った」と指摘しています。これは国民の実感に近い評価でしょう。

民間団体の立場とから言論NPOは政策評価に100点満点で41点を与えています。その理由として「構造改革の目標、生産性の高い部門への資源の最適配分によって産業構造を高度化させ、経済成長の利益を最終的に国民が享受することだとすれば、それは現時点で実現していない。むしろ格差や貧困などの問題を発生させている。政府は次の成長基盤に向けて税制、雇用市場などのインフラの形成を実現しておらず、また社会保障などの制度設計でようやく消費税の増税を軸とした安定財源の整備を位置づけたことは評価できるが、まだ実現の目処はついていない」と指摘しています。

全部の評価は紹介できないので、もうひとつだけ紹介します。それは全国知事会の評価です。政策実績に関する評価では、80点満点で44点を与えています。これも落第点といえるでしょう。全国知事会は、地方分権政策に注目しています。地方分権政策に関して次のように指摘しています。「地方分権一括法案の提出。分権要領、出先改革工程表を決定しているものの、官僚の抵抗は続き、第3次勧告も遅れる等、22年3月の分権改革推進法失効を前に、分権一括法国会提出など改革の実現を危惧」と、地方分権政策が進んでいない実情を説明しています。また「国と地方の定期意見交換会が創設されたが、形式的な会議であり、実質的に地方意見は反映されているとは言い難い」と、政府の熱意の不足を指摘しています。

９団体の評価はいずれも自公連立政権に“落第点”をつけているといえます。自民党は今回の選挙にあたって、マニフェストを示す前に、正確な事故評価を与えるべきでしょう。もちろん、自民党はこのことを十分に意識しています。朝日新聞の7月29日付けの朝日新聞は次のような記事を掲載しています。「自民党は２９日、前回０５年総選挙の政権公約の自己評価を発表した。１２０項目のうち未達成はないとの内容で、細田博之幹事長は記者団に『国会審議で達成できていないものもあるが骨の部分はほとんどできている』と強調した。民主党が自民党の前回のマニフェストを独自に検証し３０日に発表する動きを見せていることから急きょ発表。公約に掲げる１２０項目を３段階で自己採点し、『郵政民営化に再挑戦』『行政スリム化プログラムの推進』など５５項目は実現したとする『Ａ』。『簡素で効率的な電子政府の実現』『政府関係法人の合理化および効率化を実施』など６５項目は取り組み中・一部実現した『Ｂ』とした。未着手の『Ｃ』はないとしている」。これを先の９団体の評価を比べると興味深い。朝日新聞の記事では、民主党による評価が出るから慌てて自己評価したということで、いかにも誠実さに欠ける対応のように思える。

【自民党のマニフェストの内容】
自民党のマニフェストのスローガンは「日本を守る、責任力」です。民主党のマニフェスト（当初）が13㌻であるのに対して自民党のマニフェストは34㌻にと長いものです。最初に次のような指摘をしています。「今、日本は、そして世界は、めまぐるしい変化の中にいます。そのスピードに対応できるように、日本も、政治も、変わらなければならない。しかし、やみくもにすべてを“変える”ことが、よいわけではない。必要なのは、現実を見据えて時代遅れになったシステムをスピーディに改めながら、もともとある強みをしっかりと伸ばしていくこと。改めるべきは改め、伸ばすべきは伸ばす。私たち自民党は、リアルな政策を実行し、全力で日本を守ります」「戦後の日本を、世界有数の大国に育てた自負があります。しかし、その手法がこの国の負の現状をつくってしまったことも、近年の行き過ぎた市場原理主義とは決別すべきことも自覚しています。こえからは、“国をメンテナンスしていく”時代。現実を正しく変えるのは、現実を直視するリアルな政治。改める。これが自民党の決意です」。なんとも稚拙な文章です。言い訳一杯の文章という印象を免れません。過去を否定的に評価すれば、自らの責任が問われるために、過去を肯定しながら、同時に前向きなメッセージを送らなければならないために、文章に迫力がないのでしょう。そして「国を変える」のではなく、「メインテナンス」をすることが政策の目標に掲げられているのです。「『国のしくみ』のマイナスを改め、プラスに」というのも苦しい文章です。「改革ではなく、改善をする」ということなのでしょう。どんな国にしたいかのメッセージこそが、国民が最も聞きたい部分なのではないでしょうか。多くの国民は非常に大きな閉塞感を覚えています。おそらく自民党の幹部には、時代の危機感が感じ取れなくなっているのでしょう。

この４年間にできなかったことが、これからできるのかなというのが、素朴な疑問として浮かび上がってきます。「新待機児童ゼロ作戦による保育サービスの充実。そしてひとり親への支援拡大、児童手当の給付など、子育てのための経済支援とをバランスよく進めます。また、３～５歳児の教育費用は段階的に軽減し、平成24年度には完全に無償化するなど、子育てに心強い政策を具体的に実行します」。まず疑問なのは、待機児童の問題やシングルマザーに対する支援の必要性は繰り返し訴えられてきました。しかし、なんら具体的な対応を取らなかったのが自民党と政府だったのですが、急に育児支援が政策の柱になってきたのはどうしてでしょうか。先に発表された民主党のマニフェストには「保育所の待機児童を解消する」という政策が掲げられています。その政策目標として「縦割り行政になっている施設を一本化し、質の高い認可保育所を整備する」と規定し、「小中学校の余裕教室・廃校を利用した認可保育園の増設を進める。“保育ママ”を増員、認可保育所の増設を進める」「2009年度に廃止された生活保護所帯の母子加算を復活する」「父子家庭にも児童扶養手当を支給する」などと具体的な施策が盛り込まれています。

一方、自民党のマニフェストには、具体策として次の様な文章が書かれています。「少子化の流れを食い止め、国の責任のもと、児童福祉の原則を踏まえ、保育の質の確保と充実に努め、新待機児童ゼロ作戦等による保育サービスの集中整備や地方における定員割れ対策を行う。またひとり親家庭等に対する支援の拡充、児童手当など、子育て支援のためのサ－ビスと経済的支援をバランスよく進める。子育て等に配慮した低所得者支援策（給付付き税額控除等）を行う」と、前書きをなどった説明が付け加えられているだけです。長期政権を維持してきた自民党は、なぜ今回のマニフェストに掲げた政策を実行してこなかったのかという疑問が払拭できません。やや勘ぐりかもしれませんが、自民党のマニフェストは民主党のマニフェストに対抗するために出されてきた政策が多い印象を受けます。また教育費軽減や授業料の無料化など、基本的に自民党と民主党の政策に大きな差はありません。ただ、繰り返しですが、なぜ自民党は今まで、そうした政策を本気で実現しようとしなかったのでしょうか。民主党に追い込まれているかなで、対抗的に提案したということではないのでしょうか。自民党は、なぜ今までそうした政策を実施しなかったのか、なぜ今回のマニフェストで取り上げたのかを説明する必要があるでしょう。

【自民党の経済成長戦略】
自民党は民主党のマニフェストには経済成長戦略がないと批判しています。では自民党の経済成長戦略はどんなものなのでしょうか。その前にバブル崩壊後の15年間、日本経済は低迷を続けきました。多くの日本経済に関する専門家は、その要因のひとつに政策の失敗を指摘しています。その詳細はここで触れる余裕はありませんが、そうした検証や反省が経済成長戦略を主張するまえに必要でしょう。

自民党のマニフェストには「経済成長戦略」として次のように政策が提言されています。「低炭素革命で世界をリードするとともに、安心・元気な健康長寿社会を目指して、引き続き大胆かつ集中的な経済対策を講じ、景気の確実な底入れ・反転により2010年度後半には年率2％の経済成長を実現する。その後2011年度から内需と外需にけん引された持続的かつ安定的な成長路線へ復帰させ、今後３年間で40～60兆円の需要を創出し、概ね200万人の雇用を確保する」。では、具体的に２％成長をどう達成し、３年間で40兆円から60兆円の内需をどのように創出するのでしょうか。残念ながら、自民党が誇示するような政策は明記されていません。どう民間の内需（個人消費と企業の設備投資、住宅投資）を増やしていくのか明確な政策は書かれていません。ただ「経済成長による新規需要に加え、女性や高齢者の労働参加により、10年で家庭の手取りを100万円増やし、一人当たりの国民所得を世界のトップクラスに引き上げることを目指す」と目標を掲げていますが、それは高い経済成長が実現するという前提条件付きです。自民党のマニフェストの経済関係の部分は、すべて経済成長が回復するという前提で議論されています。麻生首相は繰り返し「景気回復に全力を注ぐ」と主張しています。経済政策は“目先の景気政策”と“長期的な成長政策”が必要です。そうした大きな政策の枠組みは、マニフェストを読む限り見えてきません。「今後、自民党は“数字上の景気回復”を国民が“実感できる景気回復”にするために、あと２年、経済対策に全力を尽くす決意です」と、決意表明をしていますが、それはスローガンに過ぎません。

【責任力とは何か】
麻生首相の党首討論での発言や演説を聴いていると頻繁に出てくる言葉に“責任力”というのがあります。マニフェストの表紙にも「日本を守る、責任力」と書かれています。おそらく自民党は責任力という言葉を使うことで、民主党を攻撃する戦略を取っているのでしょう。同じような言葉で自民党がよく使う言葉に“責任政党”というのがあります。自民党幹部は「我が党は野党と違い責任政党である」という言い方をします。この世の中に“無責任政党”が存在するのでしょうか。政権を担っている与党は、どの党であれ、責任を持って政策を実行に移そうと努力します。野党は与党を批判することで、国民の支持を得ようとします。それは当然のことで、国民はそれがデマゴーグなのかどうかちゃんと判断するものです。そうしたプロセスを経て、政権交代が行われ、政策が失敗すれば、次の選挙で再び政権交代が起こるというのが民主主義のルールです。別に自民党だけが責任ある政党であり、野党が無責任な政党というわけではないのです。無謀で継続性のない人気取り政策は、かならず破綻するでしょう。どの政党にも“責任”はあります。今回の選挙で問われているのは、自民党が十分に国民の負託に応えることができず、既得権構造を打破できないということが明白になったことです。

【今回の選挙で問われること】
日本青年会議所のマニフェスト評価の文章の中に「官僚主権国家から国民主権国家への転換」という表現が使われています。まさに今問われているのは、どんな形の国家を作り上げるかだと思います。それ言い換えれば、政策決定プロセスを根本から見直すということです。民主党は政権構想として、政府のあり方、国会のあり方、官僚の役割など政策決定プロセスと政策の優先順位の見直しを主張しています。具体的には「官僚丸投げの政治から政権党が責任を持つ政治家主導の政治」「政府と与党を使い分ける二元体制から内閣の下の政治決定への一元化」「各省の縦割りの省益から官邸主導の国益へ」など政権構想の５原則を掲げています。これに対して自民党のマニフェストは、「行政改革・政治改革」の項目を掲げ、「中央省庁改革」として①民間を元気にする規制改革、②地方を元気にする地方分権、③政府を効率的・最適化する行政改革を掲げ、「行政改革を総合的・機動的に推進するために現在多くの組織に分かれている行政改革機能を総理の下に集約する」と書いています。これは改革ではなく、あくまで“メインテナンス”の域をでるものではないようです。

その他、「天下り根絶宣言」「国家公務員制度改革の推進」「総人件費改革」などを政策として発表していすが、あくまで手直し似すぎず、日本青年会議所が言う「官僚主権国家から国民主権国家への移行」という問題意識は希薄というよりも、皆無といったものです。自民党と官僚機構はお互いが補完し合いながら共存してきました。基本的に自民党の意識の中には「官僚主権国家」は存在しないのです。自民党にとって「時代遅れとなったシステムをスピーディに改める」ことが問題なのであり、システムは崩壊していないのです。崩壊していないのなら改革する必要はなく、修繕すれば済むことになります。したがって、そこには「国のあり方を変えよう」という問題意識は存在しないのは当然でしょう。政策の優先順位の抜本的な見直しをする必要性も感じていないのでしょう。問題は、その現状認識が正しいかどうかです。

【財源論争】
自民党、民主党、社民党、国民新党もそれぞれマニフェストで政策公約をしています。その内容は、確かに“ばらまき”と批判されるような項目もあることは事実です。逆に言えば、今まで政策の優先順位で低位に位置づけられていた政策が全面に出てきたともいえます。そうしなければもはや国民の支持を得ることができなくなっているのでしょう。個別の政策の評価をする余裕はありませんが、自民党と民主党の間の争点になっているのが、“財源問題”です。自民党は「消費税を含む税制の抜本的改革について、平成21年度税制改革改正法附則による筋道に沿って平成23年度までに必要な税制上の措置を講じ、経済状況の好転後遅滞なく実施する。これにより、堅固で持続可能な“中福祉・中負担”の社会保障制度を実現する」と書いています。要するに最終的に財源は消費税の引き上げによって確保するということです。これが“責任”ある政党の政策ということです。消費税を引き上げることで財源を手当することができるのなら、これほど簡単なことはないでしょう。その議論はさておき、これに対して民主党は「政治とは、政策や予算の優先順位を決めることだ」と主張しています。そして新しい政策の優先順位に基づいて、「すべての予算を組み替え」、「税金のムダ使いを再生産している今の制度を改め、新たな財源を生み出す」と主張しています。言い換えれば、「ゼロベースで予算を見直す」ということです。今までを良しとする自民党にとって、ゼロベースでの予算見直しをすることは無謀なことに映るでしょう。民主党にとっても「やってみなければ分からない」というのが本音でしょう。官僚がサボタージュすれば、簡単にはゼロベースでの見直しはできないでしょう。最終的に消費税の引き上げが必要になるにしても、まず徹底した予算の見直しが、その前提になるでしょう。

【結論】
週刊誌などのマスコミ調査では、圧倒的に民主党が勝利を収めるという予想が主流になっています。選挙は水物で、結果が出て見なければ分かりません。仮に民主党が予想通り勝利を収めたとしても、どの程度の議席差になるかで、政策運営が変わってくるでしょう。今の国民の雰囲気は、おそらく“政権交代”をしてみようというものではないかと思います。個別の政策論争や財源論争もありますが、一番問われているのは、これからの国のあり方をどうするかなのでしょう。日本人は変化を嫌う国民性が強いと言われます。極めて保守的なところがあります。しかし、同時にどんな変化でも受け入れる柔軟性ももっています。８月30日の選挙結果は、一般に思われている以上に日本の将来に大きな影響を与えるものになるのは間違いないでしょう。

2件のコメント

粗大ゴミ選挙の感はいなめません。ゴミ収集車になるのはどっち？

コメント by satoco — 2009年8月20日 @ 08:16
日本は先進民主国家では異例とも言える政治状況が続いてきました。細川政権の誕生など極めて短期間を除き、民主党が単独、あるいは連立で政権を維持し続けてきました。
この最後の部分は
　「自民党が単独、あるいは」
の間違いでしょうね・・・訂正されたほうがよろしいかと・・

コメント by bakaichi — 2009年8月22日 @ 11:33

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