中岡望の目からウロコのアメリカ

2004/11/19 金曜日

『アメリカ保守革命』の書評

Filed under: - nakaoka @ 9:13

この2日間、雑誌「諸君」の原稿を執筆していて、まったく時間が取れず、新しい原稿をアップできませんでした。世界は動いています。いつも自分なりに観察し、自分なりの意見を述べていくつもりです。今回は、すこし宣伝をこめた内容になります。今まで、アメリカについていろいろ書いてきました。その際に、私の基本的なアメリカ理解のベースとなっているのが、今年4月に中央公論から出版した『アメリカ保守革命』です。

本欄にも何度も触れましたが「ネオコン」というのが一種の流行言葉になっています。イラク戦争のもたつきで、その”人気”も急落気味ですが、ブッシュ再選でまた違った意味で関心を引く存在になるのではないかと思います。ただ、巷間、ネオコンに関する本は、正直、興味本位のものが多く、本当のアメリカの姿を伝えていないのではないかと思います。拙著では、アメリカの保守主義運動を戦後直後から説き起こし、なぜアメリカの保守化が進んだのかを詳細に分析したものです。そして、アメリカの保守主義の背景にある世界観、社会観を明らかにすることで、アメリカの保守化の本質を解明しました。そうした長い流れのなかで「ネオコン」が登場します。最初は貧しいユダヤ人の若者が始めた運動でした。その多くはトロッキストでした。戦後、彼らは民主党に属し、反共主義を柱として、議論を展開していました。ですから、彼らは「冷戦リベラル」と呼ばれたのです。しかし、民主党の対共産政策に不満を抱き、同時にポルノ解禁など過剰なリベラリスムに対する反発から、彼らは民主党を離れ、共和党に合流していくのです。戦後から始まった保守主義の流れと一体化しながら、彼らはアメリカ保守主義の本流へと変わっていくのです。詳細は、ぜひ『アメリカ保守革命』をお読みください。今回、拙著の「書評」を2本掲載しますので、ぜひご一読ください。

経済誌「産業新潮」最新号の書評
「 米国大統領選挙は、ブッシュ大統領が圧勝した。イラク戦争の是非を巡って激しい論争が行なわれたが、国民はブッシュ政権の外交政策を支持したのである。今回の選挙で米国の保守化が一段と鮮明になったことだ。9月11日の連続テロ事件以降、米国社会の右傾化が指摘され、特に「ネオコン」と言われる保守グループの存在が注目されるようになった。ネオコンに関する本が相次いで出版されている。しかし、それらの本を読んでも、なぜアメリカが保守化し、彼らの思想が外交政策に影響を及ぼしているのかなかなか理解できない。まるでネオコンを陰謀集団のように描いている本が多い。

そんな中で米国の保守化を戦後の歴史の中で説き起こしたのが、本書である。本書は、保守運動が50年代に伝統主義者と言われる保守グループによって始まった事実を指摘する。その運動の底にはニューディール政策やリベラリズムが伝統的価値を破壊しているとの危機感があった。保守思想は60年代に政治運動に結びつき、レーガン政権の誕生への道筋をつけた。同政権の誕生で保守主義革命は頂点を迎えた。同時に、それはリベラルの決定的な後退を意味し、その流れが現在に至っているのである。

本書は、ネオコンは保守運動の一つに過ぎないことを明らかにする。そしていかにネオコンが保守主義運動の中心となっていくかを明確に説明している。本書を読み終わったとき、今、米国で起こっている政治や思想の動きを本当の意味が理解できるようになるだろう。米国のみならず、世界の保守化の動きに興味ある人には必読の本である」

もう1つの書評です。『諸君』2004年7月号
今月の新書、「今月のベスト」宮崎哲弥評

「『アメリカ保守革命』という表題はいかにも座りが悪い。前進的なイメージの「アメリカ」の国柄に「保守」的な思潮は似つかわしくないし、「保守」という政治態度におよそ「革命」はそぐわないからである」

「ことろが「保守革命」としかいいようのない政治変革が、実際にアメリカで起こった。それが本書のメインテーマである。アメリカにおける保守主義の潮流を素描する書ならいままでもあった。だが、そのリアルポリティックに置ける興隆を、思想史の趨勢と関連づけて体系的に説明した一般書はこれが初めてである」

「イラク戦争開始に前後して「ネオコン」というアメリカ政界の一派、一ムーブメントを指す語が、俄かに人口に膾灸し、その定義や内容をめぐって論争すら起こった」

「このネオコンこすが、まさにアメリカにおける保守主義革命の主役を演じた。だが、同時にネオコン派はアメリカ保守が胚胎した鬼子でもあった。著者、中岡望は、そうした込み入った脈絡を丁寧に解きほぐしていく」

「経済政策と保守思想との関係に力点をおいた本書の叙述は、類書にまったく見られない特色であり、経済ジャーナリストならではの視点が生かされている」

以上は、書評の一部抜粋ですが、評者の宮崎氏は、本書を「今月のベスト新書」と紹介しています。もし、アメリカの現実を本当に理解したいと思われるなら、ぜひ拙著をご一読ください。

1件のコメント

  1. 保守化は必ずしも悪いことではない
    『地球回覧』を読む。

     『保守化する米キャンパスの光景』

    の見出し。

     『米国の世論を二分した戦争という意味で、イラク戦争はベトナム戦争になぞらえられる』

    という書き出しで始まる記事は、同じ戦争時ながら、

     『決定的に異なることがある。それは…

    トラックバック by 日経を読むと世界が読める — 2005年4月2日 @ 08:54

このコメントのRSS
この投稿へのトラックバック URI
http://www.redcruise.com/nakaoka/wp-trackback.php?p=30

現在、コメントフォームは閉鎖中です。