中岡望の目からウロコのアメリカ

2004/12/8 水曜日

急速に高まるスノー財務長官更迭説

Filed under: - nakaoka @ 1:29

以前、このブログで「第2次ブッシュ政権の経済チーム」について書きました。その中で、スノー財務長官は留任という見通しを書きました。今まで既に8名の長官が辞職する意向を示し、既に後任が決まっています。後、重要ポストで残されているのは財務長官だけです。スノー長官自身は、まだその職務に執着心があるようです。大統領選挙中もブッシュ大統領に精一杯の忠誠を示し、積極的に選挙運動に加わっていました。ですから、スノー自身は、なんとかその地位を確保したいと願っているのは間違いありません。が、アメリカのメディアでは急激にスノー更迭(辞任ではない)説が急浮上しています。為替問題、財政赤字問題もあり、誰が経済担当の閣僚になるのか、注目されています。『ニューヨーク・タイムズ』紙と『ワシントン・ポスト』紙の報道をベースに、スノー交替の噂を以下で検討してみます。(注:本原稿をアップしてから数日後にブッシュ大統領はスノー財務長官に留任するように要請し、スノー長官も受諾しました。しかし、本ブログの内容としては依然、面白いものがありますので、ご一読ください)

スノー交替を巡って、『ニューヨーク・タイムズ』紙と『ワシントン・ポスト』紙の報道の仕方が微妙に違っています。『ニューヨーク・タイムズ』紙は明確に「ブッシュ大統領はスノー財務長官を更迭することを明確に決めた。後任が決まりしだいに発表する」と書いてます。これに対して、『ワシントン・ポスト』紙は、ホワイトハウスの報道官スコット・マクレランの記者会見の言葉を引用しながら、「スノー更迭の話はワシントンでいつもある推測ゲームの一部に過ぎない」と、どちらかというとまだブッシュ大統領は決定していないとのニュアンスで報道しています。同紙は政府高官の「大統領はまだ決定していない」という言葉を品用しています。

ただ、この数週間、アメリカの様々なメディアがスノー更迭の推測記事を流しており、ある意味ではスノー長官は晒し者になっている状況になっています。そうした状況にもかかわらず、ホワイトハウスはスノー長官の留任といった明確な意思表示をしていないために、そうした推測が流れているのでしょう。ただ、まだホワイトハウスのスタッフが明確な意思表意をしていないということは、スノー交替の可能性も残っているといえるわけです。

第2次ブッシュ政見の経済課題は、社会保障制度改革と減税が最大の課題になっています。ホワイトハウスは、12月15日と16日に「経済フォーラム」を開催して政策を練り上げる方針を出しています。ただ、スノー長官はホワイトハウスでの会議に参加して、ブッシュ大統領と話をしており、この議論からはずされているわけではありません。ただ、2002年12月にオニール財務長官が突然更迭されました。ホワイトハウスはオニール長官を信任するというシグナルを出していたにもかかわらず、突然の解任となりました。それは、同年の夏にテキサス州ワコで開催されて「経済フォーラム」で利子配当課税を巡る議論が行なわれ、オニール長官はどちらかというと慎重な姿勢を取りました。それが、12月の経済政策の詰めをする段階で、大幅な配当減税を主張するホワイトハウスと対立し、解任に結びついたのです。それと同じように、経済政策を巡ってスノー長官とホワイトハウスとの間に対立、あるいは意見の食い違いがあれば、今月中旬に予定されている「経済フォーラム」で明確になるでしょう。

ただ、問題はさらに1週間以上、スノー長官の処遇を巡って中途半端の状況が続くのかどうかです。また、政策の値率という点でも、経済政策立案はホワイトハウスで決定しており、財務省や財務長官は、その政策を議会や国民に売り込むのが役割になっていました。とすれば、オニール解任と違い、政策の対立が理由になることはないでしょう。とすると、仮にスノー長官が解任されるとすると、その理由は何かということになります。

今回の一連の人事は、ブッシュ大統領の側近重視が目立っています。国務長官に指名されたライスも、司法長官に指名されたゴンザレスも、いずれもホワイトハウスのスタッフであり、ブッシュ大統領の側近です。そうしたカテゴリーからいえば、スノー長官はブッシュ大統領から遠いところにいるのは間違いありません。第2次政権は、もう次がないために、内部で乱れが出てくるものです。それを側近中の側近、あるいはブッシュ大統領に忠誠を示すスタッフを要職に配することで、一体感と安定化を狙っているのかも知れません。

そのため、ブッシュ大統領の側近中の側近といわれる一人であるアンドリュー・カード大統領首席補佐官がスノー長官の後任になるのではないかとの推測も流れてます。カードは、2001年9月の連続テロ事件の時にブッシュ大統領にアドバイスをして、それ以降信任をえて、重用されている人物です。また、父親のブッシュ政権の時に運輸長官を務めたブッシュ一家に近い人物でもあります。今回の大統領選挙が終った日に、ブッシュ大統領はカードの首席補佐官の留任を発表しているほどですから、その信頼の厚さは想像できます。ただ、カードは財務長官のポストに興味があると伝えられています。その他の候補者としては、元上院議員のフィル・グラムの名前も挙がっています。これは冗談に近いのですが、グリーンスパンFRB議長の名前さえ取り沙汰されています。

財務長官人事は、国務長官人事と並ぶ大きな人事です。それは、ドル下落問題もあり、日本にとっても無関心ではおられない問題です。ちなみに、ラムズフェルド国防長官は留任が決まり、ミネタ運輸長官は近いうちに辞任すると報道されています。

この投稿には、まだコメントが付いていません

このコメントのRSS
この投稿へのトラックバック URI
http://www.redcruise.com/nakaoka/wp-trackback.php?p=45

現在、コメントフォームは閉鎖中です。