中岡望の目からウロコのアメリカ

2004/12/30 木曜日

ウォーレン・バフェット、ヘッジ・ファンド、ビル・ゲーツ、そしてドル相場の見通し

Filed under: - nakaoka @ 10:58

今年も残すところ2日となりました。年末の多忙さにかまけて、この数日、原稿をポストすることができませんでした。ですが、どんなに多忙でも2~3日に1本は新しい原稿をポストするつもりです。アメリカの友人からアマゾンを通して本を贈ったとの連絡が入りました。その内容は、昭和天皇の戦争責任に関する本だとのこと、正月早々から重い問題に直面しそうです。このブログの読者の多くは為替相場に関心を持っておられるようで、為替関連の記事の読まれる頻度が高いようです。従来も何本も原稿を掲載しましたが、極めつけの情報を1つ提供します。といっても別に秘密情報ではありませんが・・・。

本ブログで「ウォーレン・バフェットの人物論と投資哲学」について書きました。どちらかというと伝統的な投資手法で投資をしてきたのが彼の投資の成功の秘訣でした。その文章の中でも、バフェットはヘッジ・ファンドやオルタナティブ投資など最近はやりの投資手法にはあまり関心を持っていないと書きました。だが、このところ投資収益が芳しくないことから、少しずつ彼は方向転換をしているようです。

バークシャー・ハザウエイ社の「年次営業報告書」は投資家にバイブルのように読まれています。第3四半期の報告書が発表になり、注目を浴びています。同社は第3四半期は、アメリカの株高にもかかわらず、損失を計上しましたが、第3四半期は利益を計上しました。投資のリターン(利回り)の回復の大きな要因は、外国為替への投資が増えたことによるものです。2003年末の外貨投資残高は120億ドルでしたが、2004年9月末には200億ドルに増えています。バフェットは「投資家への書簡」の中で「2002年に私の人生で初めて外国為替市場に投資しました。2003年には、ドル安を予想して、外貨投資のポジションを増やしました」と述べています。主な投資対象はユーロとイギリスのポンドです。投資対象となっている通貨は、ユーロ、ポンドを含め8通貨になっています(円が入っているかどうかは確認できませんでした)。バークシャー・ハザウエイ社は第3四半期に為替投資で4億1200万ドルの利益を計上しています。ユーロは12月にドルに対して最安値をつけています。もしユーロ投資のポジションが大きければ、バークシャー・ハザウエイ社の外国為替投資は間違いなく大きな利益を上げたと思われます。
あるアメリカのメディアは「バフェットはドルから逃げ出している」と刺激的な表現をしています。

バフェットは、ドル安は数年にわたって続くと予想しています。その理由は、特に目新しいものではありません。アメリカの財政赤字と経常赤字が累積するなかで、為替相場は当然ドル安にならざるを得ないということです。特に彼は、海外の投資家が大量のドル資産を持っていることを懸念しています。いつか急激なドル離れが起こるかもしれないと恐れているのです。また、バフェットはFRB(連邦準備制度理事会)が金利を引上げたも、ドル安の流れを阻止することはできないだろうとも言っています。また、アメリカ政府が財政赤字問題を解決するためにインフレを利用するのではないかとも恐れています。それはドル安を加速化することになるからです。

こうしたドル安相場観は、多くのヘッジ・ファンドのマネジャーも持っているようです。ヘッジ・ファンドで有名なジョージ・ソロスは1992年にポンド安を予測して、彼が運用するファンド「クオンタム・ファンド」の資金を大量に為替市場に投資して10億ドルを稼ぎました。「クオンタム・ファンド」と呼ばれる”マクロ・ファンド”は、マクロ経済の指標を見ながら為替相場のトレンドを読んで投資をするのが特徴です。最近のドル安相場をうけて、再びマクロ・ファンドが動き出しつつあると『ニューヨーク・タイムズ』紙は分析しています。たとえば、ジョン・W・ヘンリー社は、ドル安を予想して11月に資金を為替市場で運用して38%のリターンをあげています。

ソロスと一緒に「クオンタム・ファンド」を運用してきたジム・ロジャースは「ドル相場は一度急激に下落した後、戻し局面があるが、その回復は一時的なものだろう。ドル安相場は何年にもわたって続くだろう」と見通しを述べています。

タイトルの最後の「ビル・ゲーツ」ですが、実はマイクロソフト社の会長のビル・ゲーツが、12月14日にバークシャー・ハザウエイ社の取締役に就任したのです。同時に、彼はこの10年間に同社の株式3億1900万ドルを取得したことを明らかにしています。ビル・ゲーツの総資産は480億ドルあり、その1%未満を同社に投資していることになります。ゲーツは、情報通信分野以外への分散投資を進めているとのことです。バークシャー・ハザウエイ社の株式取得に際して、ゲーツはマイクロソフト社の株式を売却した代金を当てたそうです。ハイテクの勇が、最も伝統的な手法を取るバークシャー・ハザウエイ社に投資し、役員になるというのは、何か意味があるのかもしれません。

ちなみに、バークシャ・ハザウエイ社は、マイクロソフトにはまったく投資していません。またビル・ゲーツとウォーレン・バフェットは年は違いますが、親しい友人です。

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