中岡望の目からウロコのアメリカ

2005/2/19 土曜日

第2期ブッシュ政権の日本との新しい軍事同盟:アメリカの保守派専門家の分析(国務長官、外務大臣の「共同声明」も掲載)

Filed under: - nakaoka @ 10:02

2月19日にアメリカのライス国務長官とラムズフェルド国防長官と日本の外務大臣と防衛庁長官の会談が開かれます。今まで、日米問題を取り上げたブログを書いていないので、今回、触れることにしました。が、まずはアメリカ側が何を考えているかを理解するために、保守派のシンクタンクで、ブッシュ政権の政策に影響力を持っている「ヘリテージ・ファンデーション」の政策アナリストのBalbina Y. Hwangの論文「日米閣僚会議:新しい安全保障関係の焦点(The US-Japan Ministrial Talk: Focus on a New Security Relationship」の翻訳を掲載します。これは2月17日付けの同ファンデーションのニュースレター「Executive Memorandum」で掲載されているものです。PS:本ブログを掲載後、19日の国務長官と外務大臣の会談終了後に「共同声明」が発表になりましたので、全文を掲載します。ただ、日本語のテキストはないので、英語から全文を翻訳します。

2月19日にラムズフェルド国防長官とライス国務長官が日本のカウンターパートと、2002年12月以来、最初の「2プラス(two plus two)会談」で話し合いを行ないます。こうした会談を開催する必要性が今まで以上に差し迫っているいるわけではない。アメリカにとって国際安全保障環境の変化は、安全保障上の脅威に関する厳密な地域的な定義が時代遅れになったことを意味している。これに対応して、ペンタゴンは10年以内にヨーロッパとアジアから7万人の軍隊を国内に戻すことによって、国際的な安全保障政策の再定義を始めています。ワシントンは次第に同盟国に地域の平和と安全を監視する際に今まで以上の役割を果たす政策に転換してきている。

したがって、アメリカ政府は、日本が自衛隊の作戦展開能力を強化し、日本でのアメリカ軍の再編を行なうために日本との正式な2カ国協議を始め、基地問題に取り組むように勧め、またアメリカ議会の議員と日本の国会の議員が対話と意見交換を行なうように勧めるべきである。

日本の新しいガイドライン:日本は、その役割として、自らの軍事政策の劇的な検討を行なってきており、より大きな国際的な安全保障の役割を進んで担うようになっているように思われる。これは、急激に変わりつつある北東アジアの安全保障環境の変化に直面して自国を防衛する日本の能力について危機意識が高まっていることが主な理由である。テロリズムと北朝鮮の核兵器開発プログラム、大陸間弾道弾の開発能力に加え、中国と中国の急速に高まりつつある政治、経済、軍事力に対する懸念がある。中国の海軍の拡張と地域的な野心は、昨年11月に中国の海軍を日本の南方諸島に侵入したとき、衝撃的なほど明確になったのである。

このために昨年12月、日本政府が閣議において今後10年間で日本の防衛政策を確立する「新しい防衛政策ガイドライン」を承認したのである。このガイドラインは安全保障環境の変化を考慮するように修正されたもので、同時に日本がアメリカとの同盟関係をさらに強化する決意を反映している。ただ、日本政府は初めてアメリカ軍を受け入れるために日本の市民の負担を軽減する必要性に言及する一方、アメリカの抑止力の維持についても言及している。また、初めて、ガイドラインは中国と北朝鮮を懸案として指摘し、国際平和維持活動で自衛隊のもっと積極的な役割を要請するなど大幅な政策変更を行なっている。また、アメリカにミサイル防衛部品を販売できるようにするために日本の武器輸出禁止を緩和している。

日米同盟:最近の日本の法律修正は、ミサイル防衛システムを含むアメリカとの共同作戦をより実施しやすい環境を作り出している。たとえば、2月16日に日本政府は現在の自衛隊法を修正し、自衛隊の参謀総長は首相の承認の元に、内閣と日本の安全保障会議の許可なく、ミサイルによる迎撃を命令できるようになった。この法案は、航空、海上、陸上自衛隊のすべてを監視する統合本部(joint staff)を設立し、統合された指揮系統の元に自衛隊を再編成することを求めている。

こうした変化は日本の防衛と安全保障戦略について行なわれた検討を反映したものであるが、日本軍を同盟国の双方に恩恵をもたらすことができるようなより大きな対応力をもった軍隊に変えていくにはさらに努力が必要である。1947年に締結された日米相互防衛条約(日米安全保障条約)は、かなりの程度の弾力性を与えている確固とした合意であるが、新たな安全保障の懸案に取り組まなければならないときに、共通の目標と戦略を定義するためにもっと正式なアプローチが正当化されなければならない。「2プラス2」会談は、同盟関係を前向きに強化するために具体的な計画を作成する理想的なフォーラムである。

アメリカがすべきこと:「2プラス2」会議でラムズフェルド国防長官とライス国務長官は、次のことを主張すべきである。

・日本が自衛隊の作戦能力を引き続き強化するように求めるべきであるーその中には、ミサイル防衛力、パワー・プロジェクション・システムが含まれる。また、国際安全保障にもっと貢献するように求めるべきである。

・日本との正式な2国間協議を始めるべきであるーそれは2国間サブコミティの形式を取り、日本における米軍の再編成を行ない、基地問題に取り組むために対話を継続するように求めるべきである。この協議は、安全保障政策イニシアティブ(SPI:Security Policy Initiative)の線に沿って制度化すべきである。SPIは、軍隊の再構成と再配備を最終的に決定し、両国の軍事力に冠する共同研究を強化するためのメカニズムとしての役割を果たしている。日本との間で最も差し迫った問題である基地問題は、以下のように提案すべきである。(1)アメリカ軍の横田基地を民間と軍の共同使用にすること。(2)沖縄駐在の海兵隊を2600名削減することによって、沖縄のアメリカ軍の負担を軽減すること。この中には、砲兵隊と歩兵隊を2008年後のある時点までに日本本土に移転することも含まれる。(3)現在、ワシントン州のフォート・ルイスにあるアメリカ陸軍の 第一軍団本部を神奈川県の座間キャンプに移転する可能性があること。(4)横田基地にある第5空軍師団本部のかなりの部分をグアムの13空軍師団に統合する。

・日本と真剣な対話を始めるべきであるー(アメリカ空軍の第一軍団の日本への移転の可能性も含め)同地域のアメリカ軍の再編成は、日本の役割が2国間の安全保障条約の範囲を超えることになるのかに関して真剣な対話を行なうべきである。

・日本と一緒に戦略を開発すべきであるー中国の軍事力、経済的な上昇、台湾海峡の安全保障、中国の新しい防衛政策、中国の日米同盟関係に与える意味にどう取り組むべきか、共同で戦略を開発すべきである。

・アメリカ議会の議員に日本の国会議員との対話を勧めるべきである

結論:アジア太平洋とそれ以外の地域での安全保障に関連する懸念の高まりは、日米同盟に新たな問題を突きつけている。両国は、強力な同盟国のパートナーシップに基づいた新しい安全保障関係を構築するために、今、作業を開始すべきである。

以上がBalbiana Y, Hwang氏の分析と提案です。この翻訳はあくまで情報提供のためのもので、私の特別なコメントをつけません。また、私は軍事問題の専門家でないので、軍事用語で翻訳の間違いがあると思います。調べる時間がないので、訳語が間違っているところがあると思いますが、ご容赦を。

20日:共同声明発表
米国務長官と日本の外務大臣は、2005年2月10日に発表された北朝鮮が6カ国協議への参加を無期限に中止し、既に核兵器を開発しているとの声明に関して深い懸念を抱いていることを明らかにした。

両大臣は、北朝鮮の核開発プログラムは国際的な核非拡散体制にとって重大な挑戦であり、日本を含む北東アジアの平和と安全に対する直接的な脅威であることを確認した。

両大臣は、北朝鮮に対する基本政策を確認する一方、6カ国協議を通して核問題の平和的な外交による解決を引き続き求める決意を繰り返し表明した。

両大臣は、事前の条件なしに北朝鮮が6カ国協議に復帰し、信頼できる国際的な承認のもとに、ウラニューム濃縮プログラムを含むすべての核開発プログラムを完全に廃止することを強く要請した。

両大臣は、北朝鮮の生命は自らを国際社会から孤立化させ、6カ国協議を通して核問題を平和的に解決しようとする努力に反するものであることで合意した。

両大臣は、北朝鮮が表明している隣国と国際社会との関係正常化は6カ国協議に即座に復帰し、北朝鮮の核開発計画を廃止することによってのみ実現できることで合意した。

両大臣は、この方法が北朝鮮にとって国際的な安全保障の保証と国民の厚生の向上、隣国・地域・国際社会との新たな関係構築に向かう最善の道であると述べた。

両大臣は、北朝鮮のミサイル・プログラムに対する懸念を表明し、いかなる状況に対しても準備するために引き続き上表を共有することを決定した。

両大臣は、拉致問題を迅速かつ完全に解決することを北朝鮮に強く求めた。

米国務長官は、拉致問題で日本の立場をアメリカが支援していることを再確認した。

また、両大臣は、日米間の安全保障の取り決めの引き続き強化し、その重要性を再確認し、両国が地域の平和と安全に対する挑戦を阻止し、取り組む両国の能力に対して自信を持っていることを表明した。

1件のコメント

  1. ライス訪日は注目しています中国重視のなかどのように展開するのでしょう

    コメント by 星の王子様 — 2005年2月20日 @ 04:08

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