中岡望の目からウロコのアメリカ

2004/10/25 月曜日

アメリカ大統領選挙の分析(5)激戦で見通せぬ結果

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世論調査では支持率はブッシュ・リードが続いているが、最終的な結果がどうなるかまったく予断を許さぬ状況が続いています。既に述べたように、大統領は全体の得票数(それを英語でpopular voteといいます)で決まるわけではありません。各州に割り当てられた選挙人をどれだけ獲得するかで決まります。州で勝利を収めると、その州の選挙人をすべて獲得することができます。前回の大統領選挙でポピュラー・ボートでゴアに負けたブッシュ陣営は、保守的なキリスト教系の青年層などに積極的に働きかけ、今回は得票数でケリーを上回ることを狙っています。他方、ケリー陣営は、婦人層を中心にリベラルな支持層の掘り起こしに取り組んでいます。11月2日の投票日まで1週間になりました。最後の鍔迫り合いが展開されています。現時点で見通しをまとめておきましょう。

大統領選挙の結果を決めるのは、「スイング・ステート」とか「バトルグラウンド・ステート」と呼ばれる州です。これらの州は、前回の大統領選挙でブッシュ、ゴアの両候補が競り合った州で、僅差で勝負が付いた州です。どちらにも転びうる州で、各候補ともバトルグラウンド・ステートで勝利を収めようと、最終局面で大量のスタッフを投入し、選挙資金を使って大量のテレビ・コマーシャルを流しています。現在、バトルグラウンド州と言われているのが11州あります。全選挙人の数が538人ですが、この11州で135人を占めています。その11州とは、コロラド州、フロリダ州、ネバダ州、ニューハンプシャー州、オハイオ州、アイオワ州、ミシガン州、ミネソタ州、ニューメキシコ州、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州です。

『ワシントン・ポスト』紙の予想では、現時点で獲得が確かな選挙人数は、ブッシュ候補が213人、ケリー候補が225人です。残りが100人の選挙人を巡って、選挙戦が展開されているのです。同紙の予測を見る限り、現時点ではケリー候補の獲得数がブッシュ候補を上回っていますが、その差は12人で、1州の動向で簡単に覆ってしまう程度の差でしかありません。11州のうち7州では、両候補の支持率は拮抗しており、どちらにも行き得る可能性があります。前回の大統領選挙よりも登録有権者の数が大きく増えており、それだけに見通しも困難になっています。両陣営とも、最終的に、フロリダ州とペンシルベニア州、オハイオ州を制した候補が大統領選挙で勝利すると見ています。

人と資金をバトルグラウンド州に投入する一方で、両陣営とも最後のアピールを行なっています。ブッシュ陣営は、争点をイラク戦争と国土安全問題に絞込み、ケリー候補が3軍の司令官として脆弱であり、アメリカの命運を任せることはできないと訴える戦略を取っています。これに対して、ケリー陣営は焦点を経済問題に当て、反撃を図っています。ブッシュ政権が成立して以降、大幅な雇用減があったなど、ブッシュ政権の経済政策の失敗を訴えています。特に雇用喪失が大きいオハイオ州やペンシルバニア州で積極的に雇用問題や雇用の海外流失を訴えることで支持を得ようとしています。

まだ態度を決定していない有権者の数はかなり残っています。情報合戦も激しくなっており、ブッシュ陣営はウィリアム・ムーアの映画「華氏911」のケーブルテレビでの放送を禁止するように圧力をかけ、ケリー陣営は放送局のシンクレア・グループが予定していたケリー候補のベトナム戦争のドキュメントの放映の禁止を求めるなど、相手陣営の動きに敏感になっています(この2つはいずれも放映されないことになりました)。今回の大統領選挙も前回同様、土壇場まで結果が分からない事態になる可能性があります。

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