中岡望の目からウロコのアメリカ

2005/2/28 月曜日

ネオコンが見る日本の防衛政策:彼らは「日本は防衛政策で大きな転換をした」と判断している

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相変わらず締め切り原稿や色々な予定に追われ、なかなか時間が取れません。先週の木曜に記事をアップして以来、多忙で原稿を書く時間がありませんでした。先週の日曜に書いた「日米防衛協議」に関する記事は今までで最高に読まれました。防衛問題に対する関心の強さに正直、驚いています。前回の記事ではあまり分析的なことは書けなかったのですが、「共同声明」の全訳もあり、興味を持っていただいたようです。今回もあまり時間が取れないので、アメリカでの論調を紹介するに留めます。おそらく日本人が考えている以上に、今回の「防衛協議」はアメリカの専門家の間で注目されているようです。これも日米の”パーセプション・ギャップ”の1つかもしれません。今回紹介するのはネオコンの週刊誌『ウィークリー・スタンダード』誌に掲載されてものです。タイトルは「アメリカはヨーロッパ以外に重要な友人を持っていることを覚えておくことは重要である(It is worth remembering that America has important friends outside of Europe」で、筆者はTom Donnellyです。ここでいう「友人」は、日本のことです。ブッシュ大統領の訪欧と関係修復が行なわれたことを受けて書かれた原稿です。

彼はまず次のように主張しています。「アメリカは人類史で唯一の超大国である。したがってアメリカの安全保障は真に国際的なものである。アメリカの政治原則は普遍的なものである。そうなら、なぜ我々はパリやベルリンでアメリカがどう見られているのかに拘る必要があるのか」と、最初にいかにもネオコン的は世界観を披瀝しています。と同時に、ブッシュ大統領がヨーロッパとの和解を求めていることを暗に批判しています。そしてラムズフェルド国防長官の「ミッション(使命)が各国の結びつき(coalition)を決定する」という主張を引用して、アメリカには2つのミッションがあると指摘しています。すなわち「パックス・アメリカーナ(アメリカが中心となる平和)」を維持するという戦略的な目標を達成するためには(1)中東の政治を変革する(トランスフォーム)することと、(2)中国の軍事力の拡大を封じ込めることが必要であると主張しています。すなわち、現在のアメリカの外交政策は中東と中国を軸としているということです。

そして中国との関係で、筆者は日本の動きに注目しています。彼は「日本は本当に戦略的なルネッサンス(復興)を行なっており、ブッシュ政権に東アジアで真剣に責任を負い、中国問題が中東問題で陰が薄くならないようにと要求している」と分析しています。そしてドイツと比較して「ドイツの地政学的な役割が低下しているのに対して日本は再び勢いを盛り返している」と指摘しています。さらに「日本は基本的にアメリカと一緒に台湾海峡の共同防衛を行なうことに合意したということがリークされている」と、今回の防衛協議に関して触れています。合意が”リーク”されているということは、表面的な合意以上に何かの約束があったということを示唆しているのかもしれません。そして「これは大きな進展であり、日本政府の本当の勇気ある行動である」と、日本の”決意”を賞賛しています。さらにm筆者は、現在のパックス・アメリカーナに基づく世界秩序に異議を申し立てているのは、中国とイスラム過激派であると指摘しています。

「アメリカの東アジアでの役割を考えることは、同時にアメリカの中東での軍事行動に貢献することが当初思っていた以上に(日本にとって)重要となってくる」と指摘しています。要するに日本がアメリカに東アジアでの役割の増大を期待するなら、日本が中東でアメリカに協力することも重要になってくるということです。「日本は最初の湾岸戦争でアメリカの費用を補填するために膨大なお金を拠出した。そして現在、日本経済は成長が鈍化しているにもかかわらず、信頼できる資金の拠出国であるだけでなく、直接的な軍事・再建作戦に参加している」と、現在の日本のイラク戦争に対する関与を評価しています。そして、日本がそうした寄与をしているのは「日本がこれを単にアメリカとの同盟関係を維持するための代償と見ているだけでなく、世界の政治との大きな戦略的結びつきがあると見ているからだ」と、分析しています。そして「東京は中東の情勢が不安定になれば東アジアの情勢も不安定になる可能性があると理解している」と指摘しています。

さらに「アメリカ同様、日本はポスト・モダンの政治学に屈することなく現代的な経済を発展させてきた。北朝鮮が日本の領土を越えるミサイルを発射し、中国が日本の領海を侵犯したことで、日本の戦略家は緊急事態を考え始めている。日本は台湾以上に台湾海峡での軍事バランスを真剣に考えているように見える」と、日本の置かれている東アジアでの状況と日本の反応を分析し、「軍事的に日本は提供する多くのものを持っている。日本の施設はこの地域でのアメリカが軍事行動を行なう際に絶対不可欠なものである。日本の空軍基地にアクセスできなければ、台湾海峡の防衛は不可能である。自衛隊、特に海上自衛隊と航空自衛隊は有能であり、アメリカ軍と作戦行動の乗り入れ(interoperability)ができる。日本は自らの軍事能力を改善し、ミサイル防衛などの分野でアメリカ軍との共有性を高める政策を取ってきている」と、日本の防衛政策を分析。そして結論として「日米同盟を改善することの最も重要な側面は、デモンストレーション効果にある」と書いています。

日本が日本の防衛問題をどう考えているかは別にして、少なくともアメリカの右派の論者は、日本が台湾海峡の防衛を明確に日米の”共通の戦略目標”であるということに合意したことで、日本が新たな軍事的役割を担う決定をしたと理解しているようです。あるいは会議の中で報道されている以上に台湾海峡における軍事バランスと安全保障、軍事的な役割に関するの議論が行なわれたのかもしれません。この分析に特にコメントをつける時間はありません。ただ、アメリカの有力な雑誌で、こうした日本の防衛政策を巡る議論が行なわれているということは、知っておくべきでしょう。

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