中岡望の目からウロコのアメリカ

2008/12/6 土曜日

GM倒産の危機の構造:なぜアメリカの自動車業界は破綻しつつあるのか

Filed under: - nakaoka @ 17:05

今、アメリカの最大の問題となっているのは自動車会社ビッグスリー(GM,フォード、クライスラー)の経営危機です。特にGMは急激に手元資金が枯渇しており、政府の”つなぎ資金”がないと、倒産する可能性があります。そのためビッグスリーは議会に対して緊急援助を行うように要請しています。11月の議会の審議では「自動車産業救済法案」は採決に至りませんでしたが、ペロシ下院議長の要請に応じて12月4日に再建計画を再提出し、ビッグスリーの首脳は議会の公聴会で再び支援の必要性を訴えました。まだ最終的な結果はわかりません。一部報道では政府と議会で妥協が成立し、つなぎ資金の緊急融資が行われる可能性が出てきています。しかし、それはあくまで一時的な危機回避の措置で、アメリカ自動車業界が抱えている問題の本質的な解決にはなりません。今回はアメリカの自動車産業の問題について解説します。

GM(ジェネラル・モーターズ)は自動車業界の世界の最大手企業であり、アメリカ資本主義を代表するような企業です。実は、現在、GMは倒産の瀬戸際に立っているのです。GMとフォード、クライスラーは政府の資金援助を求めています。GMのワゴナー会長は「政府支援が得られなかったらGMは倒産する」と語っています。GM、そしてアメリカの自動車業界に何が起こっているのでしょうか。

【自動車を巡る日米問題】
1952年のことですが、当時のGMの会長チャールズ・ウィルソンは議会証言で「GMにとって良いことはアメリカにとっても良いことだ(What is good for GM is good for the country)」と語ったことは有名です。それほどGMはアメリカを代表する企業でした。またフォードは科学的な経営手法に基づきフォード生産様式をいう独自の自動車生産システムを作り上げるなど、自動車産業はアメリカの資本主義を代表する産業でした。高級車を持つことはステータス・シンボルであり、多くのアメリカ人の夢でした。

そんなアメリカの自動車産業が大きな転機を迎えたのは1970年代の石油ショックでした。アメリカの車は“ガス・ギャズラー(ガソリン食虫)”と言われるほど燃費が悪いものでした。しかし、ガソリン価格が安い時は、誰も燃費効率の良い自動車を買おうとはしなかったのです。しかし、石油ショックでガソリン価格が急騰すると、売れ行きは落ち、逆にそれまで誰も見向きもしなかった日本車が急に注目されるようになったのです。

日本車の対米輸出は急増し、自動車問題が日米の大きな通商摩擦のひとつになりました。80年代前半、日本車の輸入急増でビッグスリー(GM、フォード、クライスラー)は議会に圧力をかけ、輸入を阻止しようとしました。労働組合も日本車反対運動を展開し、デトロイトでは労働者が日本車をハンマーで壊すという出来事も起こり、日米自動車紛争が大きな話題になりました。日本の自動車メーカーは輸出の台数を自主規制することで、自動車問題は沈静化に向かいます。同時に、日本の自動車メーカーは摩擦を避けるために現地生産を積極的に行うようになりました。たとえば現在、アメリカ市場で売ら得れているトヨタの自動車の40%程度は現地生産されたものです。またアメリカの自動車会社も“トヨタ生産方式”を取り入れるなど合理化を進めていきました。

【アメリカの自動車業界の構造問題】
しかし、原油価格は90年代に入ると下落し、GMなどは燃費が良いが利幅の薄い車を生産するよりも、収益率の高いSUV(スポーツタイプの多目的自動車)やピックアップ・トラックの生産に再び傾斜し始めます。消費者も以前と同じように大型で格好の良いSUVなどを積極的に買うようになったのです。こうした高収益車へのシフトでGMなどの業績は改善していきます。

こうした製品構成の問題が、今回のGMなどの経営危機の伏線となります。もうひとつGMは構造的な問題を抱えています。それは労働コストが非常に高いということです。従来、アメリカ企業は人件費を原材料と同じ変動費と考える傾向があります。したがって景気が悪くなると簡単にレイオフしてしまうのです。しかし、そうした中でGMは経営学者ドラッカーの勧告を受け入れ、労働者を人間として扱う労働政策を取るようになります。具体的には医療補助や年金制度などを積極的に充実させていきます。なおアメリカの労働組合と日本の労働組合は組織形態が基本的に違います。日本企業では労働組合は企業内組合で、それぞれが独立しています。しかし、アメリカでは産業別組合が普通で、自動車産業の場合、全米自動車労組(UAW)に工場別に所属します。各職場の組合はUAWの支部で、“チャプター”と呼ばれています。労使協議は会社側とUAWで行われ、妥結内容はチャプター毎に投票で信任か否決されます。アメリカでUAWは最強の労働組合なのです。以前ほどではないですが、今でも自動車工場ではストが頻繁に行われています。

その結果、アメリカの自動車会社の労働賃金は極めて高くなっています。ある調査はビッグスリーの1時当たりの報酬(医療保険や年金、諸手当などのコストを含めたもの)は73・20ドルであると推計しています。トヨタ自動車の場合、その額は48ドルです。他の産業の専門職の場合は47・57ドル、製造業の労働者の場合31・59ドル、全産業で28・48ドルです。この数時から分かるように、アメリカでは自動車メーカーの賃金は圧倒的に高いのです。これはGMなどが特殊な制度を持っているからです。たとえば医療保険にかかる費用は自動車会社が負担していますが、退職後も家族も含めて医療保険が適用できるシステムになっています。アメリカでは医療費は日本では信じられないくらい高いのです。年金も他産業に比べると手厚くなっています。もうひとつ自動車業界特有のシステムがあります。自動車メーカーが合理化などによってレイオフした労働者は“ジョブ・バンク(job bank)”という制度が適用され、働いていたときと同じ賃金が保障されるのです。昨年の秋に労使交渉で年金基金の管理がUAWに移されるなど、会社側の負担軽減措置が取られましたが、高コスト構造は基本的に変わっていません。ハーバード大学のマーチン・フェルドシュタイン教授は「今のままだったらアメリカの自動車メーカーはアジアの自動車や欧州の自動車に価格で太刀打ちできない」と言っています。

こうしたコスト高に加え、アメリカの自動車メーカーのデザインは時代遅れで、日本車や欧州車に比べると垢抜けしておらず、消費者離れを引き起こしていました。また、研究開発投資でも日欧の自動車メーカーに大きく後れを取っていました。特に燃費や環境に配慮した自動車の開発に消極的でした。たとえば議会で厳しい排気ガス規制を導入しようとしても、ビッグスリーは常に反対し、法案を潰してきました。環境問題に対しても、あまり積極的な取り組みをしていません。

【アメリカ自動車産業の危機】
上記のような状況の中でアメリカの自動車メーカーのアメリカ市場でのシェアは確実に低下してきました。トップ企業のGMのシェアは遠からずトヨタ自動車に追い抜かれるのは避けられない見通しになっていました。ただ高収益のSUVやピックアップ・トラックの売れ行きが好調な間は高利益を上げることができたので、問題は表面化しませんでした。しかし、ここ数年の原油価格の暴騰がビッグスリーを直撃したのです。高価格で燃費の悪いSUVの売上は急激に落ち込み始めます。その結果、ビッグスリーの業績も悪化し、赤字に転落します。工場閉鎖やブルーカラーのレイオフだけでなく、ホワイトカラーの賃金30%カットなども合理化の一環として実施されました。しかし、焼け石に水で、赤字を埋め合わすことはできませんでした。

GMは11月初に第3四半期の業績を発表しました。25億ドルの赤字で、前年同期比よりは赤字幅は縮小しましたが、連続5期にわたって赤字となりました。10月のGMの自動車販売台数も前年同月比45%と大幅な落ち込みを記録しました。しかし、決算発表の時にさらに衝撃的な事実が明らかになったのです。それはワゴナー会長が「現在の状況が続けば、年末には資金不足に陥り、倒産という事態も起こりうる」と発表したのです。業績悪化に伴い手元流動性(現金)が急速に減少していたのです。毎月の操業を継続するには最低でも手元に110億ドルの資金が必要だと言われています。すなわち部品会社への支払いや労働賃金など経常的な支払があるのです。もし部品代を支払わなければ、部品調達ができません。そうなれば操業を停止することになるでしょうし、期日が到来した借入の返済ができなくなれば、文字通り倒産せざるを得ません。

経営悪化で企業の格付けも大幅に引き下げられて、スタンダード&プアーズ社のGMの社債の格付けは“ジャンク債”にまで引き下げられています。そんな状況では運転資金を調達するためのコマーシャル・ペーパーの発行も事実上できなくなります。アメリカは金融危機で金融逼迫が起こり、金融機関だけでなく一般企業も資金調達が厳しくなっていました。要するにGMは資金繰りができなくなっていたのです。ワゴナー会長は「問題は経営にあるのではなく、国際的な金融危機にある」と、自らの責任を棚にあげた発言を繰り返していました。

そんな中11月7日、ドイッチェ銀行がGMに関するレポートを発表しました。その中で「政府の支援がなければGMは12月以降、資金繰りがつかないだろう」と書かれていました。同レポートは、「12月末には手元流動性は50億ドルを下回る可能性がある」とも指摘しています。最低限必要な手元資金ば100億ドルから110億ドルですから、50億ドルという予想は市場を驚愕させました。GMの株価は暴落し、65年来の最安値2・92ドルを付けたのです。株式の時価総額も17億ドルにまで減少しました。これは1年前の90%減という惨憺たる状況になったのです。

先に述べたように市場での資金調達は極めて困難になっています。GMの既発社債の流通利回り(イールド)は30%を超えていました。要するに投げ売り状態だったのです。そんな中で新規の社債を発行することは無理ですし、コマーシャル・ペーパーを買う投資家はいません。銀行も要注意企業に貸すほど余裕はありません。それどころかビッグスリーに対する自動車ローンも要注意リストに載せているほどです。残された道は二つです。ひとつは政府に救済援助を求めることであり、もうひとつは倒産(倒産法第11条-通称チャプター11)を申請して債務を処理し、再建を図ることです。

【成功しなかった政府の救済援助】
政府は「緊急経済安定化法(金融救済法)」で7000億ドルの「問題資産救済プログラム」を設置し、金融機関の不良債権の買い取りや資本注入を行っています。ビッグスリーは、この7000億ドルを使ってビッグスリーの救済を求めたのです。まずビッグスリーの幹部は民主党の指導者のナンシー・ペロシ下院議長に面談を求め、救済支援を要請します。本来なら企業寄りの共和党や政府に支援を求めるのですが、ビッグスリーは民主党に支援を要請します。民主党は選挙で大勝した後で、「雇用重視」の景気政策を打ち出していました。さらにUAWは民主党の大きな支持団体であり、ビッグスリーの倒産はUAWの労働者が失業することを意味していました。オバマ次期大統領も「自動車産業はアメリカにとって欠くことのできない産業である」と支援支持を表明、ブッシュ大統領に直接ビッグスリーを支援するように要請しています。

こうした動きを受けて民主党は下院と上院で「自動車救済法案」を提出します。18日に提出された下院の法案を紹介しましょう。下院の金融サービス委員会に提出された法案は「緊急経済案手化法」に付け加える形になっています。同法案には「12月末までに財務省は自動車メーカーに250億ドルを上限に資金援助を行うように指示する。その資金は“問題資産救済プログラム(TARP)”の7000億ドルの第3次引き出し分から調達する。財務省は応募企業が短期的な流動性を満たし、長期的な再建計画を2009年3月31日までに策定することを指示する」と書かれています。また、融資期間は7年で、最初5年は5%、それ以降は9%の利子が付き、自動車メーカーは融資額の20%に相当する額のワラントを財務省に譲渡する、と書かれています。要するに金融機関の救済条件と基本的に同じです。

しかし、政府、ポールソン財務長官、共和党は「問題資産救済プログラム」から資金を出すことに反対します。もともと「問題資産救済プログラム」は金融機関を救済するのが目的の資金で、一般企業は対象ではないというのが反対の理由です。また一般企業を無制限に対象にすることに対することに財務省や共和党は懸念を抱いていたようです。その対案として、共和党は既に議会で承認済みの250億ドルの合理化・研究開発投資のための特別融資にビッグスリーが応募し、同資金の前倒し支出をするという案を提示します。この資金はエネルシー省が所管する資金です。しかし、民主党はこの案に反対します。ビッグスリーも、この資金の対象には外国の自動車メーカーも含まれていること、手続きに時間がかかることなどを理由に受け入れを渋ります。選挙で大勝したペロシ下院議長は共和党と妥協する意思はありませんでした。妥協することは彼女にとって政治的にプラスでないと考えていたからです。少数の超党派議員が妥協案を模索する動きがありましたが、結局、民主党と共和党の間で妥協は成立しませんでした。

その間、上院と下院でビッグスリーや学者などが参加した公聴会が開催されました。18日に上院銀行住宅都市委員会で、19日に下院の金融サービス委員会で自動車業界救済を巡る論議が行われました。ビッグスリーはワゴナーGM会長、ロバート・ナルデリ・クライスラー会長、アラン・ムラリー・フォード社長が証言し、それぞれ緊急融資が受け入れられないと倒産が現実のものになると訴えました。しかし反対派の議員を納得させることはできませんでした。

民主党議員からも「すべては信頼の問題だ。私の選挙区の人々は誰一人としてあなた方を信頼していない」(マイケル・カブアノ下院議員―民主党)という露骨な不信感も出されました。すなわち高給をもらっているビッグスリーの幹部に対する不信感と、今まで十分に競争力を付ける努力をしてこなかった経営陣に対する根深い不信感と、結局は融資した資金は返済されないのではないかという不信感が表明されました。共和党のスペンサー・ボウカス議員は「自動車業界救済は結局のところ問題を先送りするだけだ。ビッグスリーが生き残るためには。自らが競争力を高め、効率的になるしかない。経営者も労組も自ら犠牲を払う覚悟はできていないのではないか」という厳しいコメントも出てきました。ただ、賛成派のバーニー・フランク金融サービス委員会委員長は「ホワイトカラー産業は救済するのに、ブルーカラー産業を救済しないのはダブルスタンダードではないのか」という指摘もありました。

また「1979年にクライスラー救済が行われたとき、当時のリー・アイアコッカ会長は年収1ドルを受け入れたが、皆さんは受け入れる覚悟があるのか」という質問も出ました。これに対して、クライスラーのナルデリ会長は受け入れる覚悟はあると明確に答えたのに対して他の幹部の答えは歯切れが悪いものでした。

議会審議では結局妥協は成立せず、議会は感謝祭の休暇に入ってしまいました。休会明けに再び審議が行われるかもしれませんが、不透明です。その間、ペロシ議長はビッグスリーの幹部に12月3日までに再建計画を議会に提出するように要請する書簡を送っています。ただ、短期間に説得力のある再建計画が提出されるとは思えません。今議会でまとまらなければ、1月4日から始まる新議会で再び議論することになるでしょう。あるいは1月20日に誕生するオバマ政権に判断が委ねられることになるでしょう。ただ、ワゴナー会長は「新政権発足まで待つ余裕はない」と語っています。とすればGMは年末を乗り切れ図に倒産申請をする可能性もあります。

【国民の支持を得られない】
国民はビッグスリーのこうした状況をどう見ているのでしょうか。もし緊急融資が返済されなければ、それは国民の税金が無駄になったことになります。「本当にビッグスリーは救済に値するのだろか」という気持ちが国民の間にあっても不思議ではありません。逆にも「GMはアメリカ産業の象徴であり、どんな犠牲を払っても救済すべきだ」と考えている国民がいるかもしれません。11月18日に行われたギャロップ社の調査では、緊急支援に反対と答えた人は49%、賛成は47%、無回答は4%でした。ほぼ半数の国民は救済支援に反対を表明しているのです。もはやGMがアメリカを象徴した時代は終わったのです。筆者が大学で教えているアメリカ人学生は「自動車を買うとき、そのメーカーがアメリカ企業であろうが、外国企業であろうが、性能と価格が納得できれば構わない」と答えていました。

もうひとつのエピソードがあります。ビッグスリーの幹部はワシントンでの公聴会に主席するためにデトロイトからプライベート・ジェットでやってきたことがメディアで問題視されたのです。高給をもらっているだけでなく、政府の支援を要請するためにプライベート・ジェットでやってくるとは何事かということです。本当に危機なら、それにふさわしい行動があるということですが、国民感情からいえばもっともなことです。こくした批判を受け、GMはプライベート・ジェットの売却を決めたことを発表しています。

【GMは倒産申請へ?】
アメリカの多く論者はGMが倒産することを主張しています。その理屈は、連邦倒産法第11条(通称“チャプター・イレブン”)に基づいて倒産手続きに入った場合、操業を継続しながら再建することができるからです。救済資金を提供するよりは、効果があるとの見方です。ワゴナー会長は公聴会で「倒産はGMにとって現実性のある解決策ではない」と語っています。しかし、政府援助による“つなぎ資金”の調達ができなければ、倒産は避けられません。ただ、チャプター・イレブンの場合、債権者が運転資金を継続的に提供することになっていますが、現在の厳しい金融情勢のもとでそれが可能かどうか疑問視する声もあります。その場合は、連邦倒産法第7条に基づいて「清算」手続きが行われることになります。いずれにせよ、GMの倒産はかなり現実味を帯びてきているのです。

そんな中『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙が「GMの取締役会は倒産を含めた“全ての選択肢”の検討を始めた」と報道しました。GMは、この報道の内容を確認していませんが、あり得ない話ではありません。12月中に大きな動きがでてくる可能性は十分にあります。

【GM倒産がアメリカ経済に与える影響】
もしビッグスリーが倒産したら、アメリカ経済にどんな影響が及ぶのでしょうか?11月4日に中立系の研究機関・自動車研究センター(Center for Automotive Research)が「デトロイトのビッグスリーの大幅な生産縮小がアメリカ経済に与える影響(The Impact on the US economy of a major contraction of the Detroit Three Automakers)」と題する報告書を発表しました。以下、そのポイントです。現在、アメリカでは部品会社を含め自動車産業で働いている従業員の数は73万2800名(2008年9月現在)で、そのうちビッグスリーの時間給の工場労働者の数は23万9341名(2007年12月末現在)です。

同報告は2つのシナリオを想定しています。ひとつは、ビッグスリーの操業が完全に止まった場合です。その場合、関連業界を含め295万1344名が職を失うと試算しています(直接雇用で23万9341人、間接雇用で97万3969人、関連雇用で173万8034人)。二つ目は操業が半分になった場合です。その場合、 246万2375人が職を失うと試算しています。もちろんビッグスリーの再建が進めば、再び雇用は増えてきます。それでも大量の失業者が出ることは間違いありません。また初年度に1507億ドルの所得が失われると見ています。それは当然、個人消費に大きな影響を与えるでしょう。

しかし、数字以上の影響が及ぶでしょう。ワゴナー会長は「倒産した会社は消費者の信頼を失う」と、その影響の大きさを語っています。倒産すれば、最終的にどの車種の生産が継続されるかわかりません。通常消費者は将来生産が中止されるかもしれない車種を買うことはありません。倒産が現実のものとなれば、ビッグスリーの自動車の買い控えも出てくるでしょう。

最終的段階で政府支援が得られる可能性はないわけではありません。しかし、資金流出が止まる可能性はありません。その資金も1年以内に使いきってしまうでしょう。すなわち、現状が続く限り、かりに政府の救援資金を得ても、展望は開けないのです。倒産の道を選んで再建に取り掛かっても、先行きは困難な状況が待っています。

【今後の展望】
12月に入って状況がやや変わりつつあります。経済状況や雇用状況の悪化で共和党や政府にやや態度の変化が見えつつあるます。抜本的な対策はオバマ政権に委ねることにして、年末資金を手当てするために”つなぎ融資”を行う可能性も出てきていますが、そえはあくまで一時的な策に過ぎず、ビッグスリーの危機の構造に変わりはありません。

2件のコメント »

  1. 初めまして~♪
    お仕事頑張って 下さいネ(-^□^-)

    コメント by えりな — 2008年12月9日 @ 12:19

  2. 日本の自動車産業でもホンダやいすゞ、スズキあたりがつぎつぎとレーシング界から撤退を表明していて、自動車産業も変革期のようですね~

    コメント by サイぞう — 2008年12月16日 @ 18:46

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