ラムリサーチ(Lam Research Corp., Nasdaq: LRCX、本社:米国カリフォルニア州フリーモント)は、国際的な科学ジャーナルであるNatureに掲載されたこの新しい研究で、世界中のあらゆる先端半導体の大量生産で現在、人手を要する開発の欠かせない、半導体製造プロセスにおける人工知能(AI)の活用を検証しました。
半導体市場は2030年までに年間売上高1兆ドル*1規模に成長する見込みです。急増する次世代半導体への需要に対し、業界が直面する2つの重要な課題、開発コスト削減とイノベーションのペース加速を実現する可能性を本研究は明らかにしました。
本研究では、「ヒューマンファースト、コンピュータラスト(human first, computer last: HF-CL)」アプローチを取ることで、プロセスエンジニアリングの目標を現在のアプローチより劇的に早く、かつ半分のコストで達成できることを示しました。
ラムリサーチの社長兼最高経営責任者(CEO)であるティム・アーチャー(Tim Archer)は、次のように述べています。
「データドリブンな世界が求める次世代半導体への進化する需要に対し、十分速くスケールできるイノベーションへの新しいアプローチが、この業界には必要です。本研究で強調されたプロセスエンジニアリングにおける優秀なエンジニアとマシンとの、より優れたコラボレーションの可能性は、お客様と業界全体にとってゲームチェンジャーとなり得るものです。この研究は、ラムリサーチが40年以上にわたり培ってきた業界のリーダーシップと半導体製造のイノベーションを証明するものです。このエキサイティングな研究を発表したチームにお祝いの言葉を送りたいと思います」
次世代半導体の複雑化に伴い、プロセス開発の難易度やコストは上昇の一途をたどっています。本研究では、より効率的なアプローチを求めて、優秀なプロセスエンジニアとAIを搭載したコンピュータアルゴリズムとを競わせる研究を行いました。
半導体やトランジスタを設計通りに製造するために、経験豊富で熟練したエンジニアは、各工程に必要なパラメータや順序をまとめた、専用のレシピを作成します。ナノメートルサイズのデバイスをシリコンウェハ上に作るには、シリコンウェハに材料を成膜し、不要な部分を原子レベルの精度でエッチングする何百もの工程が必要です。このような半導体開発に不可欠な工程は、現在、人間のエンジニアが直感と試行錯誤で行っています。すべてのレシピはチップデザイン固有のもので、取り得るパラメータの組み合わせは100兆通り以上もあるため、プロセス開発には手間と時間、コストがかかり、新たな技術革新がますます遅れる可能性があります。この研究では、マシンとエンジニア(人間)が目標とするプロセス開発レシピを、テストバッチ数、計測やその他の経費など、関連するさまざまな要因を考慮した最も低いコストで作成することを競いました。
その結果、既成概念にとらわれない挑戦的な問題の解決には人間が優れる一方、ヒューマンファースト、コンピュータラストのハイブリッド戦略は、プロセス開発の煩雑な部分への取り組みで有用に働き、最終的にプロセスエンジニアリングのイノベーションを加速する、との結論が本研究で得られました。
ラムリサーチのバイス・プレジデント兼CEO付ストラテジック・アドバイザー(イノベーション・エコシステム担当)であり、この研究の共著者でもあるリック・ガッチョ(Rick Gottscho)は次のように述べています。「いかなる半導体の製造にも重要であるのにもかかわらず、プロセスエンジニアリングにおけるプラズマ物理学はトーマス・エジソンの時代から変わらない科学的アプローチ、すなわち“トライ&エラー”に何十年も費やしてきました。私たちの調査では、エンジニアリングの才能がイノベーションに欠かせないことに変わりはありませんが、そこに適切な段階で適切なデータを用いてAIを統合することで、プロセスエンジニアリングのコストを50%削減できることが示されました。この研究は、人間が主導するエンジニアリングのベストと、データサイエンスとマシンが提供するベストとの組み合わせが、どちらか一方だけの場合よりも優れたパフォーマンスを発揮するための規範となるアプローチを提供します。このハイブリッドなアプローチが実現すれば、業界にとって費用およびエンジニアリング時間の大幅な節約につながるでしょう」
ラムリサーチは現在、この研究から得られた主要な学習結果を開発業務に取り入れています。本研究は、プロセスエンジニアリングにおいて、人間の知識、スキル、経験と、AIの無数の可能な組み合わせを迅速に評価する能力とを適切に統合する方法について、最初の指針を提供するものです。
本論文の筆頭著者であり、プロセスエンジニアの経験もあるラムリサーチのテクニカルマネージングディレクター、Keren Kanarikは次のように述べています。
「ヒューマンファースト、コンピュータラストというアプローチでAIにエンジニアリングの専門知識を補完させることで、エンジニアは開発に伴う煩雑で手間のかかる過程の負荷を軽減し、創造的な分野に集中すること、時間やコストの制約で今まで手の届かなかったイノベーションを探求することができるようになります。プロセスエンジニアリングにおけるAIの適用はまだ初期段階で、当面は人間の専門知識とドメイン知識が欠かせませんが、今回の結果は、半導体製造のためのプロセス開発のあり方を根本的に変える道筋を示しています」
この研究は、2023年4月13日発行の「Nature」およびNature.comでも公開されています。
参考情報:ラムリサーチのニュースルームでは、本研究「半導体プロセス開発向上のためのヒューマン・マシン・コラボレーション」の全文、インフォグラフィック、その他のメディアリソースをダウンロードできます。
*1=McKinsey and Co.、「半導体の10年:1兆ドルの業界」2022年4月1日付
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ラムリサーチについて
ラムリサーチ社(NASDAQ: LRCX)は、半導体業界に革新的なウェハ製造装置とサービスを提供するグローバル・サプライヤーです。ラムリサーチの装置とサービスにより、お客様はより小型で性能の良いデバイスを構築することができます。今日ではあらゆる高度な半導体は、ラムリサーチによって製造されています。ラムリサーチは、優れたシステムエンジニアリング、テクノロジーリーダーシップ、価値観に基づく強い企業文化を融合し、お客様への揺るぎないコミットメントを実現します。ラムリサーチは、カリフォルニア州フリーモントに本社を置くFORTUNE 500(r)企業であり、世界各地で事業を展開しています。詳細はwww.lamresearch.com/ja をご覧ください。
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